今日まで、その“謎めいた組織”は様々に語られてきた。曰く、「世界を牛耳る陰謀組織」「日本や世界の歴史を動かした」「秘密の儀式を行っている」等々……。怪しげな言説に彩られた「フリーメイソン」の実態に迫るべく、日本にある15のロッジ(拠点)を束ねる総本部「日本グランドロッジ」に足を踏み入れた。
東京都港区芝公園。東京タワーに近い一等地に、漆黒の建物がひっそりと佇む。厳重にロックされた厚い扉を開けると、色鮮やかなステンドグラスに白色無垢のレリーフが広がる。奥には「HONOR ROLL(栄誉名簿)」と彫られたネームプレートがあり、「ICHIRO HATOYAMA」の文字が見える。自民党初代総裁・鳩山一郎元首相その人である。
日本グランドロッジを主宰する第60代グランドマスターの猪俣典弘氏の案内で、建物の地下へ。
「ここが“世界を牛耳る秘密結社”の中枢です」
猪俣氏が冗談めかしながら重厚な木製ドアを開けると、今度は青と白を基調とした広大な空間が現れた。
中央に置かれた祭壇を3本のポールが囲み、正面の壁には「至高の存在」を表すという〈G〉の文字が高く掲げられる。片隅には地球儀と天球儀を頂点に抱く2本の柱がそびえ、頭上には青い丸天井が広がる。
この部屋こそ、フリーメイソンが「謎の儀式」を執り行う「ブルーロッジ」だ。
「このホールはフリーメイソンの世界観を表現しています。会員はすべての社会的な肩書を外し、ひとりの人間としてここに入ります」(猪俣氏)