生涯未婚率が高まる中、平成22年度の国勢調査結果によると、40代独身女性でその後の10年間に結婚した人は、たったの「1%弱」だった。一方で、いま40代の独身女性の30%強が、「結婚願望がある」と答えている(※)。出産のリミット、親の期待と世間の目、将来の不安、何より愛の渇望――。結婚が“普通”ではなくなった日本で、理想と現実のはざまに揺れながら、40代独身女性は「結婚」をどう考えているのだろうか。したくなかったのか、できなかったのか、これからするのか。彼女たちの本音に迫る。(※明治安田生活福祉研究所「20~40代の恋愛と結婚」より)
* * *
■41歳、岡山県出身・東京都在住、インテリアコーディネーター・優子の場合
「今日は、石井ゆかりさんの“週報”をチェックしてきました。翌週の占いが、毎週金曜、19時過ぎくらいに更新されるんです。石井さんの占いは必ず励ましてくれるから、必ず見ちゃう。でももうこの歳ですから、当たらないことも、よくわかっています。占いが当たるものだったら、私、とっくに結婚してるはずですから(苦笑)」
待ち合わせたのは金曜の夜20時、東銀座のフレンチビストロ。ひざ下丈のミッド・ナイトブルーのワンピースに、レザーのトートバッグを肩にかけ、優子は颯爽と現れた。若い時はさぞかし美人だったのだろう。似ていると言われて一番うれしかった芸能人は「伊東美咲」だと微笑んだ。
「週末の過ごし方ですか? 一年前から、土曜日は代官山の読書会に通っています。私の行っている読書会ってシステムがすごくきちんとしていて、偏らず、色んな人と、本の感想を話し合えるんです。マニアックな本好きというより、私くらいの、適度な本好きが多いのもいいですね。ちなみに好きな作家は江國香織さんや村上春樹さん。読書会ではビジネス書もけっこう読みますよ。終わった後は飲み会があるんです。趣味の合う人と出会いたい、という下心はもちろんあります。カップルもけっこう誕生しているんですが、私にはまだ出会いがなくて。20代、30代までの若い人が多いからかなぁ。頑張らなくちゃいけませんね」
現在、婚活中で、「結婚は絶対にしたい」と語る優子。これまでの恋愛遍歴を聞くと、結婚していないのが不思議なくらい、順風満帆だった、35歳までは。岡山の県立高校を卒業後、京都の有名大学に進学、いわゆるリケジョで、大手製薬会社への就職を機に上京する。
「はじめて付き合ったのは大学1年生の時。弓道部の2つ上の先輩でした。好きでも嫌いでもなかったけど、はじめてだったので、こんなものかと付き合って。振り返ると、私の恋愛遍歴の中で一番のお坊ちゃんでした。カレーを作ろうとカレールウを買ってきたら『え、ルウを使うの?』って驚かれて。彼のお母さんはスパイスから調合する人だったみたい。東京の人で、成城におうちがあると言っていましたが、田舎から京都に出て来たばかりの私は『成城ってどこ』って感じ。
仲はとても良かったです。が、彼が就職して東京に行き、遠距離になって次第に連絡が途絶え、淋しくなって、私から別れを切り出しました。矛盾してるけど、好きだったから。私が東京へ行くまで、のらりくらりとでも関係を続けていたら、結婚していたかもしれないな、とは思いますが、その時は、東京に行くという確固とした意志もなかったので」
彼氏が途切れたことがない、というほどの恋愛体質ではないが、大学でも会社でも、所属するサークルや部署内で必ず相手は見つかったという。薬学部を卒業し、就職氷河期の時代に、大手企業の内定をゲット。一度の転職を経て、現在は渋谷区在住。華々しいキャリアを重ねているように見えるが、醸し出す雰囲気はやわらかく、キャリアウーマン然とした押しの強さはない。そつなく、感じよく、品よく、それが優子だ。