受動喫煙にあうのがその程度ならば、健康リスクとの関連性はなお怪しくなる。武田氏が再び疑問を投げかける。
「たばこによる影響が大きいとされる肺がんも、最近では非喫煙者で受動喫煙の被害も受けていない女性にむしろ増えています。
肺がんにも喫煙と関係の深い種類とそうでないものがあり、遺伝的になりやすい家系の人や、生活習慣など複雑な要因が絡み合ってなるので、受動喫煙だけが原因と決めつけるのは明らかにおかしいと思います」
ある研究者の中には、こんな驚くべき指摘をする人もいる。
「受動喫煙の肺がんリスクに関する疫学調査は、WHOの付属機関である国際がん研究機関(IARC)が多く行ってきたが、50以上出されている研究調査報告のうち9割近くが統計的に有意なリスク上昇とは言い難いレベル」
そんな中、最近は受動喫煙のさらなるリスクも叫ばれている。喫煙者による一次喫煙、副流煙を受ける二次喫煙、そして服や壁、床などに付着した煙の成分を再び吸い込む「三次喫煙」による影響だ。ここまでくると、“ニセ科学”と言われかねない。
「ハイハイしているような赤ちゃんが床やカーペットを舐めて、何らかのたばこ成分を口から取り込んでしまう可能性はあるかもしれません。しかし、一度付着した煙がどんな状況でまた飛散し、どういった成分がどのくらい出てくるのかは、よく分かっていません。
煙に含まれる物質が空気中でいろんな化学反応を起こし、もともとたばこになかった発がん性物質ができたとする研究も出されましたが、その後に発表された論文ではその物質が検出されておらず、まだはっきりと結論が出ていない状況です」(前出・秋山氏)
禁煙派からすれば、いくら喫煙率が減少しようとも、わずかに残るたばこの煙まで徹底的に排除したいのかもしれないが、根拠のない有害論は余計にヒステリックな社会を助長するだけではないか。最後に武田氏が警鐘を鳴らす。
「受動喫煙問題は、たばこに含まれる成分の細かな分析データ、煙との接触頻度、それが医学的にどう疾病に結び付くのか──を従来の研究や調査の結果も組み合わせてきちんと証明しない限り、皆がいっていることだから事実だという“非科学的社会”がますます広がってしまうでしょう」