興行収入53億円を突破、4度見るようなリピーターも続出している映画『シン・ゴジラ』。そのヒットの理由はどんなところにあるのだろうか?
◆備品などは、実在するものが登場
ゴジラ対策のために、不眠不休で働く“巨災対”のメンバーのパソコンが『パナソニック』や『富士通』、アップル社の『Mac』だったり、普段目にしているものが実際に画面に登場する。
「夜食には、カップ麺の『マルちゃん 赤いきつね』やコンビニおにぎりが出てきて、疲れ切った彼らが食べている姿を見ると、SFの世界とは思えないリアルさがありました」(ネットニュース編集者・中川淳一郎さん)
また、実在のビルや電車などが意外な活躍を見せるのも、今回の見どころの一つ。
◆チーム日本の底力が感じられる
庵野秀明総監督がとにかくこだわったのはリアルさの追求だ。まずは、ゴジラが現れたらどんな組織が立ち上がるのか? 膨大な3.11の資料を参考に、その流れを作り上げたという。
取材した官庁は国土交通省、環境省、原子力規制庁、内閣官房、首相官邸など。各省庁では何をするのか、大臣は何をするのかなど細かく取材。室内の調度品などは実際のものと同じ物をそろえるなど徹底的に再現されている。
また、自衛隊の全面協力の下、臨場感を出すため陸海空のそれぞれの隊員が、“もし自衛隊がゴジラを襲撃するとしたら、どうするのか”を細かくシミュレーションしたという。
「ゴジラを撃ちながら戦車が移動するシーンで、決してハズさないレベルの高さに感動した」という人も。
◆監督の遊び心の小ネタ満載
ゴジラによって首都は破壊的な状況になるが、よくよく見るとそこかしこに遊び心が隠されている。“追いゴジラ(リピーターのこと)”している人々は、それを見つけては語り合っている。
「各局、ゴジラ襲来のニュースを特集している中、一局だけアニメを流している。これは大きなニュースで各局特番を組んでいても、独自の番組を流すテレビ東京を彷彿させます。 石原さとみさん扮する米国大統領特使・カヨコも若い女性らしく、“ZARAはどこ?”と内閣府の人に聞くなど、2~3度見るとわかる小ネタも満載です」(ゲーム作家の柴尾英令さん)
◆ゴジラ対策に明け暮れる展開が潔い
石原はじめ女性キャストも登場するが、あくまでゴジラ対策メンバーの1人という扱い。それが功を奏したと映画ライターの清水久美子さん。
「恋愛が絡むとラブシーンなど、本編とは違う方向に話が進んでしまいがち。ですが、今作はそれがなかったので、人間対ゴジラという物語に集中できたのも大きかったのでは」(映画ライターの清水久美子さん)
◆豪華スターの出演場面がトリビアに
総勢328名という豪華キャストが出演している本作。全員そろっての撮影時は、他のドラマや映画の現場に人が集まらず、その撮影が止まったとか。エンドロールでは、主要キャスト以外は50音順で並ぶ異例の事態に。そこには斎藤工(35才)や小出恵介(32才)など豪華俳優の名前も。
「エンドロールを見ると、“え? あの人どこに出ていたっけ?”と驚きます。一度見ただけでは気づかない人もいますよ」(清水さん)
主演クラスをそろえたのは庵野総監督の強い思いがあったからだ。
「“1つの大きな出来事を多くの人々の視点で描く”というのが、庵野総監督の狙いでした。いわば全員が主役の脚本。それゆえのエンドロール、ということです」(同作のプロデューサーで東宝映像本部映画企画部部長の山内章弘さん)
前田敦子(25才)などほんの一瞬しか出ない人もいるので、次は見つける! と“追いゴジラ”する人が後を絶たない。
◆ネタバレさせない、ファンの口コミ力
最後に、大ヒットした最大の理由は何か? 山内さんは、「やはりネタバレをせず、“知らずに見るのがいちばんの楽しみ方”と、積極的に口コミをしてくださっているファンのかたがたの力が大きいと思います。作品を信じ、そして、お客様を信用する、ということの意味を、改めて考えさせられました」と語ってくれたが、“とにかく見たほうがいい”という言葉に推されて見た人も多いようだ。
また、山内さんによると、『シン・ゴジラ2』の製作は未定。だが、「ゴジラはドラえもんやポケモン、スーパーマリオと同様、世界中の人が知る日本の文化。もしかしたら、2020年の東京五輪では等身大のゴジラがプロジェクトマッピングで登場する、なんて演出もあり得るかも」と、中川さんは期待する。
世界各国での上映が始まるとさらにワールドワイドにゴジラブームが起きそうだ。
※女性セブン2016年9月15日号