安倍晋三首相が8月下旬、アフリカのケニアを訪れ、今後3年間で、総額3兆円規模をアフリカに投資するとともに、およそ1000万人の人材育成に取り組むと表明した。
すでにアフリカ諸国に多くの企業が進出している中国は、アフリカでの既得権益を侵されることや、「国際ルールに基づく海洋秩序の維持」との主張が南シナ海などの領土・領海問題に影響を与えることを警戒したかのような反応を示している。中国外務省報道官が「日本が計略を用いて私利を求め、中国とアフリカの関係に水を差そうとしている」とコメントするなど、日本政府の対アフリカ支援に強い不快感を示した。
外交慣例上、第3国同士の外交関係強化の動きについて、批判するのは極めて異例だけに、南シナ海問題などで、中国が海外での日本側の動きに神経質になっていることを示している。
中国国営新華社通信によると、報道官は記者会見で、共同通信記者による安倍首相のケニア訪問や第6回アフリカ開発会議についての質問に対して回答。「日本は自国の利益のためにアフリカの開発をテーマとする国際会議の席上、自らの意見をアフリカ諸国に押し付け、中国とアフリカ諸国の関係に水を差そうとしている」と述べて、安倍首相の言動に強く反発。
さらに、報道官は「会議に先立って行われた高官会合では、日本側が国連安全保障理事会の改革や海洋安全保障問題を会議の議題と成果文書に盛り込むように働きかけて、アフリカ諸国代表の強い不満を招いた」としたうえで、「各国代表は会議に社会問題、特にアジアの問題を持ち込むことに断固反対し、日本の自らの意見をアフリカ諸国に押し付けようとした日本側のやり方にも反対した」と述べて、痛烈に安倍首相を批判した。
国際会議での第3国の言動について、強烈な不満や批判を表明するのは外交慣例上、礼を失するとみなされるだけに、中国外務省報道官の発言は外交的に極めて異例だ。
記者会見という公の場で、これだけ激しく安倍首相を批判することは、習近平主席ら中国共産党最高指導部が報道官の発言を公的に認めていることを示している。
新華社通信や党機関紙「人民日報」、国営中央テレビ局など主要メディアは、報道官の発言を大きく伝えた。さらに、外交学院国際関係研究所の周永生教授や日本問題研究家の楊伯江氏に「アフリカ諸国に経済支援をすることで、50カ国以上のアフリカ諸国を押さえておいて、国連常任理事国入りを目指す」などとの解説をさせた。日本の対アフリカ支援は「私利私欲」に基づくものとの中国側の論理を国内外に浸透させる一方で、中国の南シナ海や東シナ海での海洋覇権の動きをぼやかせる狙いがあるようだ。