アメリカが9月に利上げをするかに注目が集まっている。ドル/円相場はどのように動いていくのか、為替のスペシャリスト、松田トラスト&インベストメント代表の松田哲氏が解説する。
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外国為替市場における直近の関心は、9月に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げが決まるか否かに向かっている。仮に9月に利上げを実施すれば、世界の通貨は円を除き、「米ドル高」がより鮮明になるだろう。しかし、米ドル/円だけは特殊な動きをし、「円高・ドル安」に向かうと考えている。
基本的にFOMCで利上げが決まることは、ドル買いの材料になる。円もその瞬間は円安方向に振れるだろう。だが、9月にドル金利が上昇したとしても、円高トレンドの流れは止まらないと私はみている。
2012年にドル高・円安にトレンド転換してから、2015年末ごろまでがドル上昇局面だった。ところが、今年1月4日に1米ドル=120円を割り込んだ後、ずっと円高方向に進み、8月現在は100~103円台で推移している。大きな流れでみると、こうした相場は半年程度では終わらないものだ。今年後半は円高方向にもう一段進んでいく可能性が高く、90円台のゾーンに入ることも考えざるを得ない。
6月24日、欧州連合(EU)離脱を問う英国の国民投票で離脱派が優勢との見方が広がると、一時99円まで円高・ドル安が進んだ。ドル/円が100円を割れるのは2013年11月以来、約2年7か月ぶりのことだったが、この時は99円のラインは守られた。日銀の金融政策決定を受けて7月末に一時100円台まで円高に向かう局面もあったものの、その後発表された7月の米雇用統計が市場予想を上回る改善をみせたことから、8月中旬現在は少し落ち着きをみせている。
当面は下値99円~上値108円の範囲で動くのではないか。だが、時間の問題で、いずれ99円を割れるだろう。早ければ、FOMCが開かれる9月の可能性もある。
99円を割れるようなら、ドルを売っていく戦略をとる必要がある。新安値にタッチすると、これまでドルを買い込んできた投資家たちの投げ売りが出るからだ。ただ、そのような相場で投機的な売買をするのは避けた方がよい。静観するのも大事な戦略である。もし、米ドル/円がリバウンドして105円を上に抜けていく展開になれば、110円程度を天井と考えて、105円より上で米ドル/円を売っておいて100円付近で買い戻すという作戦は有効かもしれない。
※マネーポスト2016年秋号