8月初旬の内閣改造直後、官邸内で、ある“報道”が波紋を広げた。
「しんぶん赤旗」が、稲田朋美・新防衛相が「白紙領収書」を受け取っていたとの政治資金疑惑をスクープしたのである。
国会閉会中のため永田町で追及されることもなく、赤旗が「領収書の筆跡鑑定」で独自に調べ上げた内容だったため一般の新聞が後追いすることはなかったが、看板新大臣のスキャンダルを報じた赤旗のねっとりと執拗な“調査力”に、官邸中枢は動揺を隠せなかった。
多くの人は手に取ったことがないかもしれないが、赤旗は日本共産党の「機関紙」として、日刊紙は全国で約20万部、週刊の「日曜版」は約100万部発行されている。
党の機関紙と言っても、他党のそれのように「党の方針や考え方を読者に知ってもらう」というのは、この新聞の役割のほんの一部だ。
実際には、稲田疑惑のように与党議員のスキャンダルや政権にとって不都合な情報を調査し集約する“諜報機関”であり、約200億円もの購読料という形で党収入の8割以上を支える“集金マシン”であり、新聞購読勧誘を入口にして党員を増やすための“党勢拡張ツール”でもある。
何より赤旗は、参院選で躍進した共産党のパワーの源泉ともなっている。そしてその共産党は、今後も「野党共闘戦略」を続けて国会でキャスティングボートを握ろうと狙っているのだ。
※SAPIO2016年10月号