山口組分裂から早1年、ヤクザ社会全体がこの抗争をどう捉えているか、その現場の声はなかなか届くことがなかった。そこで今回、暴力団取材のエキスパートであるライター・鈴木智彦氏が、現役ヤクザ100人に対する大規模アンケートを実施した。アンケートは100人すべてに直接電話して回答をもらった。アンケート結果を紹介しよう。
Q:山口組の分裂でなにか影響がありましたか?
はい…59人
いいえ…19人
どちらともいえない…8人
ノーコメント…14人
当然、山口組関係者は全員「はい」と予想していたところ、「いいえ」という返答が4人、「どちらともいえない」が1人いた。
「自分たちは親分に付いていくだけ。状況がどうであろうとなにも変わりませんし、影響なんてない」(山口組系幹部)
「いいえ」の回答者はこんな調子で、それぞれ意識が高く、少々考えすぎの気もする。六代目側も神戸山口組も、他団体の賛同を得ようと盛んな外交戦略を繰り広げているため、「山口組は山口組。うちはまったく無関係」(在京団体幹部)という返答も冷静とはいえず、日本最大の暴力団に対するライバル心を感じてしまう。
「あれこれ覚えるのに必死。まだ自分がヤクザで食っていけるか分からないのに、よその親子喧嘩に気をとられている暇はない」
とある末端組員(ヤクザ歴2年。20代)の返答には切迫感があった。
「どの組織も老害がひどい。実力があっても若手が上にいけないから、このくらいピリピリしてたほうがいい。これまでなら処分になると堅気になるしかなかったけど、今は反対側の組に拾ってもらえる。末端はどっち側であっても気が楽じゃないか」
分裂抗争が業界の新陳代謝を加速させているとすれば皮肉だ。
※週刊ポスト2016年9月16・23日号