カネのあるなしで格差が広がる老後や死に方。「死に方」格差の存在をわかりやすく示すのが、老健(介護老人保健施設)を転々とさせられる、「たらい回し老人」の存在だろう。都内在住のケアマネージャーが明かす。
「費用負担の安い老健はリハビリ用の施設なので、基本的に3か月しかいられませんが、病院で再度“リハビリが必要”と判断されれば、改めて老健に入ることができる。そのため老健に3か月いた後は、数日だけ病院に入り、そこからまた別の老健へ移るということを繰り返す人たちもいる。本当は有料老人ホームのような施設に入れるといいのですが、お金がないので、老健をわたり歩きながら、安い特養(特別養護老人ホーム)に空きが出るのを待つわけです」
ただ、そうやっていてもいつまで特養に空きが出ないこともある。そうしたなかで選択肢として出てくることが多いのが「グループホーム(認知症対応型共同生活介護)」だという。
認知症を患った人たちのための施設で、専門スタッフによる介護を受けながら、入居者たちがグループで協力し合って、できる限り自立的な生活を送り、症状の進行を食い止めようとするタイプの施設である。
「有料老人ホームよりは割安で最近は看取りまでやってくれるところも増えているので、老健を巡った後にグループホームに行き着く人も多くなってきている。ただし、あくまでも認知症の症状を軽減、または進行を食い止めるための施設なので、痰の吸引をはじめとする医療措置が必要な人は入居を断わられることもある」(同前)
自身の両親をグループホームに入居させたことがある介護アドバイザーの横井孝治氏はこうもいう。
「グループホームは認知症専門の施設とはいえ、症状が悪化して、たとえば暴力とか大声で騒ぐなどの問題行動が出てきた場合は、共同生活に支障が出るということで退去を迫られることもあります」
一方の高級有料老人ホームは長期利用が前提となる。元気なうちに入所して、要介護度が進むごとに入居者に合わせた介護ケアが行なわれるので、行き場を失うことは基本的にない。
さらに、「本当にお金のある人は施設すら利用しない」と話すのは都内在住の訪問看護師だ。
「住み慣れた豪邸でゆったりと息を引き取るのが一番という選択をするんです。都内の高級住宅地に住む、ある有名タレントは自分の母親を自宅で看取るために、24時間態勢で看護師をつけた。プロの看護師が24時間365日ですから、月々の支払いは200万円以上だったと聞いています」
※週刊ポスト2016年9月9日号