プロ野球界には、野球ファンによくマネされる変則フォームの投手や打者がいるが、その中でも成功したバッターの筆頭格はイチローだろう。イチローと共に「振り子打法」を開発したのは当時のオリックスの二軍コーチ・河村健一郎氏だった。
その頃のイチローは、強い打球を打つために投手方向に体をスライドさせ前足に体重を乗せていたが、これは「体重は軸足(後ろ足)」というセオリーに反するものだった。
「そのためフォーム改造を命じられて二軍へ来たのですが、タイミングの取り方が上手く、頭が投手方向に動いても、左右の足底と頭でできる二等辺三角形が崩れずに体の正面で打てていた。そこで監督に“2年間は見守ってほしい”と進言したんです。監督やコーチ陣を説得するのは大変でしたよ(笑)」(河村氏)
そこからパワー不足を補うために、早めに右足を上げて前に振り出す始動を徹底させた。日米通算4289安打(8月30日現在)の世界記録は、河村コーチとの信頼が生んだものでもあった。
※週刊ポスト2016年9月16・23日号