ライフ

唯一効果があったネット落選運動 来年の都議選で再び?

ネットニュース編集者の中川淳一郎氏

 ネットで盛り上がっても、現実の世界には反映されづらいとよく言われる。ところが、最近ではそうとも言い切れない事象が起きつつある。不誠実な販売方法によってネットで炎上、株価が半値以下に急落した企業もあれば、ネット選挙解禁で落選運動への効果を発揮した例もある。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、「所詮ネットだから…」と軽視しないほうがよい事象について紹介する。

 * * *
 東京都議会の川井しげお議長(自民党・68)が、ネットで取り沙汰されるようになっている。都議なんて一体誰がいるのやらよく分からないが、小池百合子新知事誕生に伴い、「最も有名な都議」の一人に躍り出た。

 川井氏が名を馳せたのは何といっても小池氏が挨拶に行った際、「知事と議会は両輪です。一輪車にならないように」と訓示めいたものを与え、写真撮影を拒否する大人げない行動に出た時のこと。

 この段階でネットは沸騰! 上質のヒール(悪玉)登場に色めき立った。その後も川井氏は東京パラリンピック関連イベントで小池氏と目を合わせず会釈さえしない。小池氏からは川井氏に会釈をしたり、挨拶に出向いたりしているだけに、ネット民から見ると、川井氏が単に偏屈なクソジジイであるといった印象になっている。

 となれば、ネットで発生するのが来年夏の東京都議選での川井氏に対する落選運動である。2013年の都議選で中野区から出馬した川井氏は2万8832票を獲得しトップ当選。5位の落選者が1万1693票なだけに盤石ではあるが、今後も「小池いじめ」を続けると、中野選挙区が途端にネットではアツく注目されることとなるだろう。とにかく今、「川井×落選」で検索をかけると出るわ出るわ。

〈利権の塊内田茂と川井議長は、来年の都議会議員選挙で落選させるべし〉
〈川井議長の大人気ない行動に理解出来ません。みんなで落選させましょう! それが国民のためです〉

 メディアの側も、「大人げない川井VS大人な小池」というストーリーを繰り出し、その都度ネットで川井氏叩きが始まるという構図が誕生した。9月28日から始まる都議会でも川井氏の一挙手一投足が注目され、態度を変えぬ限り落選運動が盛り上がることだろう。

 2013年の参議院選挙から「ネット選挙」が解禁されたが、私が唯一効果があったと考える落選運動がこの時発生した。それは改選定数「2(当時)」の宮城選挙区での岡崎トミ子(民主党)VS和田政宗(みんなの党)だ。

 この選挙区は自民党の愛知治郎氏が圧倒的に勝てる状況で2位争いは岡崎氏が優勢と見られていた。だからこそ和田氏は2位を狙い、元国家公安委員長でもある岡崎氏が、かつて元慰安婦支援団体がソウルの日本大使館前で開催した反日デモに参加した写真を紹介。これにネットが沸騰し落選運動が開始。最終的には和田氏が5000票差で勝利したのだ。その頃岡崎氏の名前を検索すると「売国奴」や「反日」といったキーワードが並び、岡崎氏に票を投じるのを躊躇した効果はあったのだ。

 川井氏の側は「どーせワシは地盤がしっかりしてるんで、ネットのバカどもが大騒ぎしてもどーってこたぁない」とナメていることだろう。しかし、将来的に川井氏の弟子筋やら親族が地盤を継ぐ時、「あの小池百合子恫喝ジジイの親族らしいぜ」ってな話になり、選挙民の中心がネット世代になったらどうなるか。そこは甘く見ない方がいい。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。

※週刊ポスト2016年9月16・23日号

関連記事

トピックス

現在はアメリカで生活する元皇族の小室眞子さん(時事通信フォト)
《ゆったりすぎコートで話題》小室眞子さんに「マタニティコーデ?」との声 アメリカでの出産事情と“かかるお金”、そして“産後ケア”は…
NEWSポストセブン
逮捕された元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告(過去の公式サイトより)
「同僚に薬物混入」で逮捕・起訴された琉球放送の元女性アナウンサー、公式ブログで綴っていた“ポエム”の内容
週刊ポスト
まさに土俵際(写真/JMPA)
「退職報道」の裏で元・白鵬を悩ませる資金繰り難 タニマチは離れ、日本橋の一等地150坪も塩漬け状態で「固定資産税と金利を払い続けることに」
週刊ポスト
精力的な音楽活動を続けているASKA(時事通信フォト)
ASKAが10年ぶりにNHK「世界的音楽番組」に出演決定 局内では“慎重論”も、制作は「紅白目玉」としてオファー
NEWSポストセブン
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン