世界銀行によると、2015年1年間の中国における魚介類消費量は世界全体の35%を占めた。中国はいまや世界最大の魚介類消費国だが、今後も増加することが予想され、今から14年後の2030年までに世界全体の消費量の43%に達する見通しだ。
中国全体の漁獲量は昨年1年間で1300万トンに達し乱獲が深刻化していることから、中国政府は中国近海の魚介類保護が必要と判断。中国漁船の操業規模を削減する方針を初めて打ち出した。
中国の韓長賦・農業相は8月中旬、中国中央ラジオの単独インタビューに応じ、「東中国海(東シナ海)など中国沿海と長江(揚子江)や黄河などの国内の河川には事実上魚がいなくなり、漁民が漁場を求めてさまようなど困難に直面している」と指摘。
そのうえで、韓氏は「政府は漁船団の規模を削減する計画がある」ことを明らかにした。しかし、具体的な削減目標とスケジュールは示さなかった。
香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、一部地域で漁船を3%程度減らすよう指示があったが、大半の漁港では何の指示も受けていないという。
中国農業省によると、中国の領海と排他的経済水域(EEZ)での漁獲可能量は年間800万~900万トン。それ以上の漁獲量だと、海の生態系が崩れる可能性が高いが、実際の年間捕獲量は1300万トンと大幅に超過している。
韓氏の発言は中国政府が生態系破壊の責任を追及されるのを回避する狙いがあるとの見方も出ている。
米金融経済通信社ブルームバーグによると、中国では1979年から2013年まで、漁船が5万5225隻から69万4905隻に、漁業者は225万人から1400万人に急増した。昨年の漁業の漁獲額は年間約2600億ドル(約26兆円)と国内総生産(GDP)の3%を占めている。
日本の沖縄県尖閣諸島近海でさきごろ、中国海警局の公船が一時15隻に加え、250隻以上の漁船が押し寄せた。尖閣諸島周辺はこれまで「手つかずの優良漁場」といわれているだけに、中国当局が社会的な示威効果を狙い、民間の漁船団に対して、尖閣周辺海域での漁業活動の許可を与えたとの見方も出ている。
いずれにしろ、南シナ海や東シナ海では中国政府が主権を主張している海域も多いだけに、中国漁船が日本や韓国、東南アジア諸国の領海に侵入する事態が発生することが予想されるのである。