安倍晋三首相は「総裁任期の延長は考えていない」と言いながら、8月の内閣改造・党役員人事で露骨な“任期延長シフト”を敷いた。「任期延長は大いに検討に値する」と公言する二階俊博氏を幹事長に起用したのがその典型だ。
これに異を唱えるのがポスト安倍の有力候補たちだ。石破茂氏が「(安倍首相の総裁任期が切れる)2年先のことなんて誰にも分からない。なぜ今、最優先事項なのか分からない」と言えば、岸田文雄外相は「(総裁再選から)まだ1年も経っていない段階で、さらに先の話をするのは、ずいぶん気の早い話ではないか」と疑問を呈し、野田聖子・元総務会長も「かつて相当人気のあった小泉首相ですら任期を守った。安倍首相も守る人だ」と牽制。
ポスト安倍を狙う3氏の異論には“自分たちの出番が遅くなる”との焦りと我欲が見え隠れするが、そこに若手のホープ・小泉進次郎氏が参戦し、「2年後、政治がどうなっているかなんて誰にも分からない。急いで議論すべきことか。なぜ今なのか理解できない」と党則改正を急ぐ二階氏ら執行部の動きを批判したことで延長議論は一気にヒートアップした。石破派議員は今が勝負どころと見る。
「安倍内閣と自民党がいま一番に取り組むべきなのは生前退位の意向を示された天皇陛下のお気持ちを汲んで早く法整備を進めることだ。陛下の意向を後回しにして、まず自分の任期延長を最優先にしようというのは個利個略も甚だしい。
世論調査でも任期延長には反対が強い。執行部がゴリ押しするなら、我が派は体を張って止める。石破会長もその覚悟だし、何より前回の総裁選で会長を支持した進次郎も反対の声を上げたことは大きい」
任期延長をめぐる党内バトルが勃発しているのだ。
※週刊ポスト2016年9月16・23日号