暴力団対策法が施行されて以降、ヤクザは厳しい局面に立たされていると言われる。そして山口組分裂から1年、現役ヤクザたちは、何を考えながら生活しているのか。暴力団取材のエキスパートであるライター・鈴木智彦氏が、現役ヤクザ100人に対する大規模アンケートを実施した。アンケートは100人すべてに直接電話して回答をもらった。アンケート結果を紹介しよう。
Q:今後、暴力団は非合法化されると思いますか?
はい…71人
いいえ…17人
どちらともいえない…12人
ノーコメント…0人
現在、ヤクザは暴力団対策法という法律によって存在が認められているが、今後は非合法化に向かう可能性がある。7割以上のヤクザが、将来的に自分たちの存在が許されないと考えており、「そんな遠い未来のことではない」(六代目山口組幹部)と確信している。実際、残りの3割は楽観的すぎるだろう。
「日本人はヤクザが好き。そこまで追い詰められることはない」(広域団体総長)というのは希望的観測に過ぎない。
Q:家族は不利益を被ってますか?
はい…90人
いいえ…2人
どちらともいえない…6人
ノーコメント…2人
今回、9割も回答が偏ったのは、この質問だけである。特に銀行取引ができないのが痛いらしく、最近では配偶者でも断わられるケースもよくあるという。それでも銀行の調査は完璧ではないらしく、若いヤクザなら自分名義の口座は死守している。
「ひとつだけ見つかっていない口座があってカネに換えられない価値がある」と答えてくれた有名な幹部がいるが、山口組のどちら側かは伏せておく。
また籍が入っていると公的扶助を受けられないので、偽装離婚が相当数増えているという。
子供たちの就学を考えてもデメリットが多く、同じ組織に幼稚園への入園を断わられた幹部がいると憤慨した組長は30分以上、切々と語りつづけ、なかなか話が終わらなかった。
「仕事をどうするかが大問題。これまでのように会社経営なんて書いていたら、警察にくちばしを入れられる(介入される)。手当をもらうにしても、進学する時も、離婚していないとあれこれ問題が起きるし、紙切れ一枚のことなので、女房もあれこれ言わない。
周囲は分かってるでしょ、ヤクザの子供ってことくらい。でも奥さん同士の連帯感があるみたいでそこから告げ口されることはない。それに女房のつらさはヤクザも堅気も関係ないでしょう。先生たちもさすがに差別しないと信じている」
家族に対する圧力は、ヤクザたちの日常を確実に圧迫している。
※週刊ポスト2016年9月16・23日号