最期は自宅で迎えたいという要望の高まりから在宅医のニーズが増えているが、経験の浅い医師が新規参入するケースもあり、経験不足によるトラブルも増えているという。そして、内閣府の意識調査(2012年)によると、自宅で最期を迎えたいと考える高齢者は54.6%にのぼる。しかし、実際に自宅で臨終を迎えるのはわずか12.8%となっている(2014年)。
今年7月、急性呼吸不全で亡くなったタレントの大橋巨泉氏(享年82)のケースでも、在宅医の“資質”が取り沙汰された。11年間にわたるがん闘病生活を送ってきた巨泉氏は、亡くなる約3か月前に千葉県内の自宅に戻り、在宅医療を受けた。
しかし、在宅医は背中の痛みを訴えた巨泉氏に大量のモルヒネを投与。意識障害を起こすなどした巨泉氏は退院してわずか6日後に再入院し、そのまま帰らぬ人となった。
〈一つ愚痴をお許し頂ければ、最後の在宅介護の痛み止めの誤投与が無ければと許せない気持ちです〉
妻の寿々子さんが死後、発表した手記の一文だ。巨泉氏の在宅医は「元々は皮膚科の専門医」だったことが明らかになっている。巨泉氏のケースが特殊ではないと話すのは、埼玉県在住の霧島文子さん(仮名・60)である。
「長く認知症を患っていた母は1年ほど前から寝たきりが続き、褥瘡(じょくそう=床ずれ)に悩まされていました。在宅医に相談すると、軟膏を塗ってガーゼを貼って“これで大丈夫”と言うだけ。でも、日が経つにつれて患部は広がり、とうとうお尻一面がただれたように真っ赤になってしまいました。
近くの大学病院で診断を受けたところ、患部の皮下組織が壊死している。“切開手術が必要です”と言われたのです。すぐに在宅医に伝えると、“私の専門は泌尿器科ですから!”と逆ギレされました」
他にも在宅医療を選択した家族に話を聞くと、
「夜中に往診を頼んだ時、酒に酔って家に現われた」(60代・男性)
「80代の父が夜中に“胸が痛い”と訴えたので、在宅医に往診を頼んだら不機嫌そうな顔でやって来て、鎮痛剤を飲ませて3分で帰ってしまった」(50代・女性)
などの証言を得た。
※週刊ポスト2016年9月16・23日号