本誌が2012年から続けてきた「死ぬまでSEX」特集。タブーとされてきた「高齢者のセックス」に切り込み、好評を博してきたが、その波はアカデミズムにも波及し、東京大学医学部の元学部長の石川隆俊氏が、『東大名誉教授の私が「死ぬまでセックス」をすすめる本当の理由』(マキノ出版刊)を上梓した。
石川氏がインタビューした対象は出身も学歴も職歴も様々だが、ごく一般的な人生を送ってきた高齢者ばかり。いったい彼らは60歳を過ぎて、どのようなセックスライフを送っているのか。調査報告を石川氏の解説とともに紹介していこう。
●脳梗塞後に始めたリハビリセックス(69歳男性・元銀行員)
脳梗塞になったのは10年前のこと。右半身不随となり、現在も週2回のリハビリを続けています。
私は25歳の時に4歳下の妻と結婚したのですが、50歳の時に同い年の未亡人と知り合って以来、ずっとその女性と一緒に暮らしてきました。妻とは別居していて、リハビリを手伝ってくれたのも妻ではなく彼女なんです。彼女のおかげで足を引きずりながらも自力で歩けるようになり、言葉に詰まりながらも意思を伝えることができるまで回復しました。
セックスもできるようになった。この体ですが、肝心な部分は大丈夫。なにより彼女が気を使ってくれるんです。今でも彼女とは週2回は楽しんでいます。
石川氏はこう解説する。
「脳梗塞は脳の血管に血栓が詰まり、脳細胞が損傷を受ける病気です。しかし、脳卒中やがんといった重病に罹っても、性に対する興味や意欲があればセックスは不可能ではないケースも多いのです。むしろセックスによって看病する側・される側の苦しみが癒されたという例もありました」
※週刊ポスト2016年9月16・23日号