今後の日本経済の行方に不安を覚えている人も少なくないだろうが、経済アナリスト・森永卓郎氏は「景気に明るい展望を描いている」という。いったいどういうことなのか、森永氏が解説する。
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7月の参議院選挙で大勝した安倍政権は、アベノミクス再起動を目指し、事業規模28兆円超の経済対策を打ち出しました。さらに日銀も、その後方支援として、7月29日に上場投資信託(ETF)の買い入れ額を年3.3兆円から6兆円に増やす追加金融緩和を決めました。
約3兆円の増額でしかなく、あまりに少ないという理由から当初の市場の反応は冷ややかでしたが、私は日銀が今年1月のマイナス金利導入から約6か月ぶりとなる追加緩和に踏み切ったことは評価できると考えています。さらに、これに留まらず、遠からぬうちに日銀は追加の量的金融緩和を実施すると見ているので、景気にも明るい展望を描いています。
政府が28兆円規模の経済対策を行なう財源として、国債の追加発行を行なわざるを得ないので、日本政府の財政問題がさらに逼迫すると危惧する人たちも少なくありません。だが、現状ではさらに10兆円や20兆円分の国債を追加発行しても何ら問題はないと考えています。新規発行した国債は、追加金融緩和策として日銀が買い取ればよいのです。
日銀が国債を買い取り、資金を市場に供給することには、3つの副作用が考えられます。【1】為替相場が円安になる、【2】日本国債の金利が上昇する、【3】日本の物価が上昇する、というものです。
しかし、現時点でいえば、まず為替相場はかなり円高水準となっているので、これが少々円安に振れてもかえって日本経済にはプラスに働く。それから、日本の長期国債はマイナス金利となっている。円高進行により物価も下落しており、6月の消費者物価指数は前年同月比マイナス0.5%と、3年3か月ぶりの大きな下落幅となりました。
そうしたことから、日銀がさらに国債を買い取ることで危惧される副作用は、現状ではむしろ日本経済を好転させる方向に作用すると考えられるのです。つまりは、それが円安・株高の好循環を生むことにつながるでしょう。
※マネーポスト2016年秋号