山口組分裂から1年、当事者たちは、ヤクザを続けたいと思っているのか。暴力団取材のエキスパートであるライター・鈴木智彦氏が、現役ヤクザ100人に対するアンケート調査を実施した。対象の約半数にあたる47人は山口組関係者で、内訳は六代目山口組が31人、神戸山口組が16人。半分ずつにならなかったのは、人脈を反映したもので特別理由はない。アンケートは100人すべてに直接電話して回答をもらった。アンケート結果を紹介しよう。
Q:ヤクザを続けるメリットはありますか?
はい…39人
いいえ…29人
どちらともいえない…30人
ノーコメント…2人
社会の風当たりが強くなっていると実感している割に、回答はばらけた。
「数はずいぶん減ったし、大変な時だけど、なんだかんだいって辞めないのはメリットがあるから」
広域団体幹部の解説が腑に落ちる。法規制は今後も強化されるはずで、「みんな今が限界。これ以上締め付けが厳しくなったら続けていけない」とある幹部はため息をつく。反面、シノギ(経済活動)のほとんどを海外に移したヤクザもいて、地元密着型の古典的なヤクザはどんどん減っていくだろう。
Q:堅気(カタギ)になれるなら引退しますか?
はい…16人
いいえ…47人
どちらともいえない…34人
ノーコメント…3人
分裂抗争の最中、双方の山口組勢が全員「いいえ」だったのは、「辞めるならとっくにそうしてる。いまさらの質問だ。それにこんな状態で辞めたら逃げたと思われる。意地でも辞められない」(神戸山口組系幹部)、というプライドの問題だった。他人の目を意識した回答だが本音かもしれない。
また暴力団対策の一環として、離脱のために各自治体が就労支援を勧めているが、当事者たちは、一様にそれを冷めた目で見ていることも分かる。
「元ヤクザを雇ってもトラブルの元になる。そんな会社はあってもまともじゃない。これまででかい顔して生きてたのに、いまさら頭を下げて生きるなんて無理」(西日本の独立組織幹部)
あまりに自虐的な気もするし、自身の意識が変えられないなら、社会復帰など絵に描いた餅だろう。
※週刊ポスト2016年9月16・23日号