人間は睡眠によって脳や身体をリフレッシュさせている。ナルコレプシーは、夜中に何度も目を覚まし、日中に突然居眠りをする、喜怒哀楽を表わす際に力が抜ける情動脱力発作が起こる、朝になっても起きられず、入眠時に幻覚や金縛りなどが起こる病気だ。
思春期に多く発症し、患者は日本人の約1000人に1人と推計されている。思春期に起きやすいため、うつ病やリズム障害など他の病気と診断されるケースも多い。
近年、ナルコレプシーの原因として脳内物質のオレキシンが関与していることがわかってきた。この物質を発見した筑波大学の国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史機構長に話を聞いた。
「オレキシンは、脳内にある覚醒物質の一つで、目覚めと眠りの切り替えスイッチの役割をはたしています。人間の神経細胞は、約1000億個ありますが、オレキシンを産生する細胞はわずか5~7万個。ナルコレプシー患者は、オレキシンを産生する細胞が脱落・減少しているため、覚醒を維持することができなくなっていると考えられます」
オレキシンは、ゲノムプロジェクトで発見された。神経伝達物質は受容体(鍵穴)と、それを刺激する物質(鍵)が結合して作用する。鍵の物質が見つかっていない「オーファン(孤児)受容体」の相手を見つける研究で発見されたのがオレキシンだ。