本誌が2012年から続けてきた「死ぬまでSEX」特集。タブーとされてきた「高齢者のセックス」を取り上げ、毎回物議をかもしてきたが、その波はアカデミズムにも波及し、東京大学医学部の元学部長の石川隆俊氏が、『東大名誉教授の私が「死ぬまでセックス」をすすめる本当の理由』(マキノ出版刊)を上梓した。
石川氏がインタビューした対象は出身も学歴も職歴も様々だが、ごく一般的な人生を送ってきた高齢者ばかり。いったい彼らは60歳を過ぎて、どのようなセックスライフを送っているのか。調査報告を石川氏の解説とともに紹介していこう。
●55歳の独身女性が呼び起こした男の性(93歳男性・元陸軍諜報部員)
「私は陸軍中野学校の出身です。戦時中はロシアのウラジオストクで諜報活動をしていました。現地のロシア人娼婦は目が青くて綺麗でしたよ。
終戦後に帰国し、国電や保険関係の仕事に就きました。最初の結婚は失敗し、40歳の時に再婚。その妻が3年前に亡くなり、悲しみに塞ぎこんでいた時、出会ったのが55歳の独身女性でした。
うら若き女性に、忘れかけていた男としての性が蘇りました。90歳を過ぎているのにしっかりと勃起し、射精もします。今は彼女とのセックスが生きる糧です」
●机の上のバイアグラが女房のサイン(72歳男性・元漁師)
「女房とは60歳を過ぎてからもセックスは続いていました。しかし3年前に私がED(勃起不全)になってしまったのです。「俺はもうセックスできないのか?」と頭を抱えました。そこでバイアグラを飲んでみることにしたのですが、これが効きました。おかげで今でも週に2回のペースで夫婦生活を楽しんでいます。
女房から求めてくる時は、バイアグラが何気なく机の上に置いてあるんです(笑い)。女房は今でも十分に愛液が出ていますし、快感の喜びも若い頃と変わりません」
石川氏はこう説明する
「高齢者のセックスを考える時、EDの問題は避けて通ることはできません。実は私も3年ほど前にEDになり、バイアグラを服用していた時期がありました。
私のEDは、当時服用していた降圧剤が原因でした。その薬は血管や尿道、前立腺の筋肉を緩める作用があり、高血圧などに対しては高い効果を発揮しますが、一方で陰茎海綿体の血流も減らしてしまうのです。
担当医に相談して他の降圧剤に変えてもらったところ、以前のような勃起力を取り戻すことができました。EDが降圧剤のせいだと知らぬまま、『自分はもう終わりだ』と諦めてしまう人もいるのです。常用薬がある人は、諦める前に医師に相談することを心がけましょう」
※週刊ポスト2016年9月16・23日号