1年間で病死で亡くなった人の死因の53.4%(厚労省『人口動態統計月報年計の概況』、2014年)を「がん」「心疾患」「脳卒中」の三大疾病が占めている。では「三大疾病にかかるとどのような最期を迎えるのか。「がんは痛い」「脳卒中は苦しい」などといった恐怖のイメージばかりが先行しているが、三大疾病の中にも「幸せな死に方」や「不幸な死に方」があることは知られていない。
死者数が最も多い肺がんの特徴は「痛みよりも苦しみ」と米山医院院長の米山公啓・医師が語る。
「肺の中だけの炎症で済めば痛みはさほどありません。それよりも、炎症が肺の表面を覆う胸膜にまで達すると、肺の内側に水が溜まる『肺水腫』を引き起こします。そうなると、吸い込める空気の量が減るので慢性的な酸欠状態になり、ずっと溺れているような苦しみを味わうことになります」
肺がんは再発しやすいことでも知られている。祖父を85歳で亡くした橘晃さんが語る。
「ヘビースモーカーだった祖父にがん検診を受けさせたところ、肺がんが発覚しました。肺水腫の息苦しさにも悩まされていたので、手術してがんを取り除いた後は『やっと普通の生活ができる』と喜んでいたんです。
しかし退院の翌年に再発が発覚。肺水腫もぶりかえし、地獄の日々が戻ってきました。あまりの苦しさに絶望した祖父は、それまで希望していた延命治療を拒否。ある朝眠るように亡くなった祖父を見ると、不謹慎かもしれないですが『祖父はやっと救われたんだ』と思ってしまいました」