数々の名作を世に送り出してきたNHK『連続テレビ小説』(朝ドラ)には、戦時下の日本をテーマにした作品が多い。だが、国史研究家の小名木善行氏はその描写に疑問を呈す。
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現在放送中の『とと姉ちゃん』では戦争が描かれていますが、違和感を覚えます。
第74話では、ヒロインの常子が防空壕で空襲の恐怖に怯える場面が描かれます。常子はその翌日、自身が勤める出版社で「戦争を称え、国民を煽るような雑誌を作りたいという気持ちにはどうしてもなれない」と訴えますが、一方で「お国を守るために戦争をしなければならないのは仕方のないことです」とも言う。
つまり、「戦争は仕方がないが、自分が戦争に加担するのはイヤ」という主張です。問題は、こうしたヒロインの主張がクローズアップされることで、あたかも当時の日本国民の気持ちを代弁しているかのように描かれていることです。
もちろん、戦時中だって戦争そのものを称える人など少数派でした。その一方で、始まってしまった戦争の中、家族や郷里を守るために戦うことを決意した日本人が大勢いた。
ヒロインの前述のような言動は戦後の日本人からは共感を得られるのかもしれませんが、当時を知る日本人の共感を得ることはできないと私は思います。
【PROFILE】1956年生まれ。静岡県浜松市出身。会社員、会社経営を経て国史研究家として活動。日本の正しい歴史を伝える自身のブログ「ねずさんのひとりごと」が人気に。著書に『昔も今もすごいぞ日本人!』、日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く「百人一首」』(いずれも彩雲出版刊)などがある。
※SAPIO2016年11月号