2016年に入ってからの首都圏新築マンションの販売戸数は前年割れが続いている。不動産経済研究所によると、1月/11.0%、2月/13.9%、3月/39.6%、4月/13.5%、5月/14.1%、6月/12.9%、7月/30.7%という結果であり、8月までの合計は1万7971戸で、この分では年間3万戸がやっとのレベルで、2015年の4万0449戸にはとても及ばない。
それでも、契約率は3月以降、好不調のボーダーラインといわれる7割以下の水準にとどまっている。
売れなくなった理由は、いうまでもなく価格が高くなりすぎているということに尽きる。上昇が続いても、世の中の景気がよく、年収が上がり、価格の先高感があればそれでも売れるものだが、いまはすべて真逆。景気はパッとせず、年収はよくて横ばい、価格の先高感もそろそろ潮目が変わろうとしている。
何しろ東京カンテイの年収倍率調査の2015年版では、首都圏新築マンションの70平方メートル換算価格は5616万円で、平均年収511万円の10.99倍に達している。中でも神奈川県は年収503万円に対して5886万円の11.70倍で、東京都は年収627万円の11.30倍の7086万円だから、庶民が買えるわけはない。
買えるのは、ごく一部の高額所得者、資産家、あるいは親がかりといった人たちに限られるが、そんな人たちが大勢いるはずはない。彼らは資産価値の高い都心近くの優良物件には手を出すが、それ以外はノータッチ。売れる、売れない──の二極化がいっそう激しくなって、売れないエリアが毎月のように広がり、売れるエリアは絞られつつある。
このため、相対的に価格の安い中古が人気となっている。東京カンテイの年収倍率では、中古は首都圏でも6.69倍、近畿圏は5.74倍だから、まだ平均的なサラリーマンでも何とか手が届く範囲。ただそれでも東京都は8.57倍、神奈川県は6.82倍とかなり厳しくなっている。
そこで、そろそろ売り時ということで、首都圏中古マンションの在庫件数が昨年初めからジワジワと増加に転じつつある。東日本不動産流通機構の調査では、一時期は3万3000戸程度まで減少したのが、2016年8月末では4万2000戸を超え、ほぼ1年で1万戸近く増加している。
売り手は、まだまだ売れると強気の値付けで臨んでくるが、買い手の側は以前のように買い急ぐことはなくなっている。このため、売り出し価格と成約価格の乖離が広がり、買い手の指し値がききやすい買い手市場に環境は変わりつつある。