ライフ

科学的根拠否定した歯周病治療で高額費用取る医院も存在する

科学的根拠否定する歯科医も?

 患者数330万人異常、成人の85%が感染している歯周病は、虫歯と並ぶ、歯を失う2大要因で、肺炎や心疾患などの原因ともなる。が、その治療の実態は杜撰なものが少なくない。

 保険診療の歯周病治療で、一部手抜きがあるからといって、自由診療なら確実な治療が行なわれている訳でもない。中には科学的根拠が否定された治療法で、高額な費用を取る自由診療のクリニックも存在している。

「パーフェクトペリオ」は、次亜塩素酸を主体とした歯科用の水溶液を生成する装置である。2009年に製法特許をとり、当時はテレビ番組等で口腔内の虫歯菌や、歯周病菌を殺菌できる商品として紹介され話題となった。

 しかし、「パーフェクトペリオ」は、医療機器として正式な認可を受けたものではなく、安全性や効用について検証が不十分な商品だったのである。

 日本歯周病学会は、2010年にパーフェクトペリオについて次の声明を公表した。

〈歯周治療への応用については、研究途上の段階で科学的根拠が十分であるとはいえず、日本歯周病学会としては安全性や有効性について学術的な場で充分な討議が行われた後に、臨床に応用されるべきであると考える〉

 その後、この製品は歯科医の間でもほとんど話題に上らなくなったが、今も堂々と一部のクリニックでは使用されている。自由診療としてクリニックが独自に価格を設定して患者に請求しているのだ。

 都内のあるクリニックは、ホームページに「パーフェクトペリオを併用した歯周病治療では、歯周病菌をほぼ完全殺菌できるため、軽度歯周病は1回、中等度は2回、重度の方はほぼ3回で症状が改善されます」との旨の記載がある。

 料金は1回60分で1万1880円という設定だ。保険診療でSRPを行なうよりも格段に利益は上がる。

 このクリニックに対して、日本歯周病学会が科学的根拠を否定していることを筆者が指摘すると、次のような回答が返ってきた。

「歯科医によって意見が異なる。当院としては効果がある。(歯周病の)進行を止める効果を期待してやらせていただいている」

 同クリニックには、元大学歯学部教授が勤務している。歯科治療として科学的根拠に欠ける製品を、堂々と使用するのは、モラル以前の問題だろう。患者の安全性よりも、利益を優先する姿勢こそが歯科業界の闇を象徴している。

■文・岩澤倫彦(ジャーナリスト)と本誌取材班

※週刊ポスト2016年9月16・23日号

関連キーワード

トピックス

学生時代は、練習や授業の合間におむすびを食べていた
(写真/AFLO)
《おむすびアンバサダーに就任》大谷翔平、CMオファー殺到で“撮影は1社2時間”の新ルール ファミマCM撮影では「2時間でおむすび19個を爆食い」のハードワーク
女性セブン
「BTS」のメンバーで、とりわけ高い人気を誇るジン(写真/AFLO)
BTSジンに“奇襲キス”50代日本人ファンに出頭要請 韓国当局が引き渡しを求めれば日本政府は応じる可能性、「ジンさんが処罰を求めるかどうかが捜査に影響」と弁護士解説
女性セブン
テレビ東京を退社した福田典子アナ
【独占インタビュー】元テレビ東京・福田典子アナ「退社と離婚」を初告白「広報をしていた会社を辞め、今は夫と別々の道を歩んでいます」
NEWSポストセブン
殺人などの罪に問われた内田梨瑚被告、小西優花被告(SNSより)
《小西優花被告に懲役25年求刑》「どうせ捕まるなら死なせたほうがいい」「こいつイカれてますね」内田梨瑚被告が主張した“舎弟の残虐性”と“供述のズレ”
NEWSポストセブン
1番打者に指名されたドジャース・大谷翔平とカブス・今永昇太の日本人対決で開幕する(写真/AFLO)
【3.18ドジャースvsカブス開幕戦の見どころ】侍対決は「配球」と「駆け引き」に注目、今永昇太の高めストレートに大谷翔平がどう反応するか
週刊ポスト
女優・杉咲花(27)を起用したサントリージン「翠(SUI)」の広告の“改行位置”が話題となっている
「改行するところおかしくない?」サントリージン「翠(SUI)」新広告のデザインに疑問の声が殺到、同社広報部が真意を明かす
NEWSポストセブン
デビュー10年を迎えた今田美桜
【次期朝ドラヒロイン】俳優・今田美桜が語る「悩むことも必要なこと」 劇場版『トリリオンゲーム』では15cmのヒールで「“キリカ筋”が引き締まった」秘話も
週刊ポスト
”点検商法”で逮捕された斎藤大器容疑者(33)。”トクリュウ”のリーダーである可能性もあるという(本人SNSより)
《トクリュウ逮捕》「財布の分厚い現ナマを見せつけ」「“やれそうな子”以外にはケチ」6億円豪邸にロールスロイス…「富豪アピールSNS」の斎藤大器容疑者(33)が夜の街で見せていた“素顔”
NEWSポストセブン
殺人などの罪に問われた内田梨瑚被告、小西優花被告(SNSより)
《旭川女子高生殺人・公判》「マリファナ運んでる」「リコの体に合うの」共犯者に“黙秘指示” もした内田梨瑚被告(22)の“イキリ系素顔”と“薬物アピール”
NEWSポストセブン
第5子妊娠を発表した辻希美
《逆転した夫婦関係》辻希美が第5子妊娠発表前の一家総出ファミレス、全身黒ゆるジャージで寄り添う夫とのペアルック 明かしていた「もう一度子どもを育てたい」の想い
NEWSポストセブン
結婚発表の前日、夫婦水入らずで”映画デート”を楽しんでいた筧美和子(30)
【筧美和子が結婚】「肩を抱かれ、頬にキスを…」真っ赤なニットで大胆に、イケメン経営者との結婚発表前日“映画デート”一部始終
NEWSポストセブン
倉庫内に保管されている政府の備蓄米(時事通信フォト)
今も続く「令和の米騒動」 一攫千金を狙って買い込んだ”転売ヤー”たちの嘆き「SNSやフリマアプリでもほとんど売れない」
NEWSポストセブン