書店から本が消えた──佐藤愛子さんの最新エッセイ集『九十歳。何がめでたい』は、入荷するや瞬く間に在庫がなくなるほどの売れ行きで、各書店のベストセラーランキングを席巻。続々と増刷が決まり、早くも6万部を突破した。
瀬戸内寂聴さんが「もう何度もゲラゲラ笑いました」と語り、辻村深月さんが「九十歳。やっぱりおめでたい」と評し、安藤優子さんが「とにかく痛快でした。言いたいこと言って、縦横無尽に切りまくる。でも不思議なくらいに温かい」と涙したように、世代を超えて共感を集めている。
実際にどんな人が購入しているのだろう。三省堂書店成城店で文芸・ノンフィクション担当を務める大西香苗さんはこう語る。
「私の印象ですと、購入されるのは40代以上のかたが主で、女性が7割、男性が3割ぐらいだと思います。発売された当初から順調に売れていましたが、時が経つにつれ、どんどん売れ行きが伸びています」
そして大西さん自身、この本に胸を打たれたと語る。
「佐藤さんは、周りと自分は違うという自覚がとてもあるかただと思うのですが、何があっても『だから何なの?』と堂々としている姿に、胸を打たれました。周りと視点が違うということが実は価値のあることだと思いましたし、自分が知らず知らずのうちに、普通であろうとしていたことに気づかされました」
大西さんは現在35才。40代以上の人が多く購入していく本書を読んでみようと思ったきっかけは、辻村さんだった。
「辻村深月さんの作品が好きなので、辻村さんが褒めていらっしゃるのなら、と。実際読んでみると、本当に面白い。佐藤さんは92才ですが、私もこの年にして体の衰えを感じていて、書いていらっしゃることにリアリティーを感じます。しかも佐藤さんはそれを笑いに持っていって、決して暗くない。耳が遠くなったり、体の動きが遅くなったりしても、私も佐藤さんのように、笑い飛ばせるような高齢者になりたいと思いました」
※女性セブン2016年9月29日・10月6日号