かねてよりフリーメイソンに関心を抱いてきた社会学者・橋爪大三郎氏。同氏がフリーメイソンに関心を抱いた理由は「アメリカ独立の経緯は彼ら抜きに語れず、日本の占領政策にも深く絡んでいるから」。橋爪氏がフリーメイソンの謎を読み解く。
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フリーメイソンは、どこかのプロテスタント教会のメンバーが参加するのが原則。プロテスタントなら、宗派は問いません。でもその組織それ自体は教会ではない(フリーメイソンをプロテスタントの一派・ユニタリアン教会と混同する議論があるが、正しくない)。教会を越えた、メンバーを護るための親睦組織です。
フリーメイソンは、組織のなかで教義(各宗派の信条)を語るのは禁止。宗派の対立が持ち込まれて、分解してしまうからです。ゆえに、宗教的寛容を原則とする。
彼らのシンボルマークは、石工の道具であるコンパスと直角定規を組み合わせたものですが、その中心に描いてあるGは、GodのGだとも、Geometry(幾何学、すなわち理性)のGだともいう。それをはっきりさせないのが、フリーメイソン流です。
彼らの共通の敵は、カトリック教会です。カトリック教会は巨大な情報網と異端審問権(*注)を持つ。彼らから身を守るために、フリーメイソンは何より団結が必要だった。
【*注/13世紀後半、キリスト教内の異端宗派の摘発と処罰のために設けられた。異端と認定されると宗教裁判にかけられる】
そこで彼らが立脚するのが、理性主義です。理性はもともと、神学用語。理性が何かと言えば、いわば神がつくったフリーウェアみたいなもので、各人が精神にダウンロードしている。それを用いるサイエンスやテクノロジーは、誰がやっても同じ結果になる。そして理性は正しく罪から無縁なので、人間は理性に導かれるべきという考えです。
※SAPIO2016年10月号