9月10日、名古屋に関するイベントを行なうNPO法人「大ナゴヤ大学」が、『魅力のない街? 名古屋について考える』というシンポジウムを開催した。シンポジウム開始から1時間ほどが経った頃、会場の大型スクリーンには〈なぜ週刊ポスト「名古屋ぎらい」特集は組まれたのか?〉というタイトルが映し出された──。
会場は名古屋のシンボル・テレビ塔3階の会議室。会場を埋め尽くした80人ほどの聴衆に混じり、「名古屋ぎらい」取材班の本誌記者も緊急参戦した。
講義には、「名古屋を面白いと思って活動している」という6人の講師が登壇し、各々が「魅力がない」とされる名古屋の課題について熱く語った。ついに、名古屋人たちが真剣に「名古屋ぎらい」について考え始めたのだ。
それは河村たかし・名古屋市長も同じだ。8月30日に行なわれた名古屋市と愛知県との交流の場で繰り返し、こう嘆いたという。
「うちが調べた数字で、行きたくない街ナンバーワン。よほど危機感を持って面白い街をつくらにゃあ」
名古屋市は6月に東京23区と札幌、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡の全国8大都市の住民を対象にネットを介した「都市ブランド・イメージ調査」を実施した。
その結果が悲惨だった。「訪問したい都市」で名古屋市はトップの京都に大差をつけられての最下位。「最も魅力に欠ける都市」でも2位の大阪市を引き離してトップと悲しすぎる結果に終わった。「住んでいる都市を友人・知人に薦めたいか」という推奨度でも名古屋は最下位だった。
河村市長といえば、『週刊ポスト』の「名古屋ぎらい」特集第1弾(8月19・26日号)で、「名古屋が日本を支えとる。ポストは何を言っとるんだ」と強気の発言をしていたはず。さすがに今回の調査結果が堪えたようだ。
これまで「周囲を見下している」と思われていた名古屋人の自信はグラグラと揺らぎ始めていた。また今回の調査では名古屋市民と他都市で暮らす人々とのギャップが明らかになった。
例えば、〈名古屋を連想するコンテンツ〉というアンケートでは、名古屋の“象徴”ともいうべき「コメダ」「スガキヤ」の2大チェーン店を挙げたのは名古屋市民が大半で、他都市の割合はかなり低かった。ウケていたのは名古屋でだけという結果である。この衝撃の調査結果について、『名古屋あるある』の著者で名古屋出身の川合登志和氏が解説する。
「鎖国意識の強い名古屋人は、名古屋について自慢はしたいけど、実は自信がない。そこで東京の人が名古屋メシを取り上げてくれたという成功体験から、普段よく行くコメダやスガキヤを挙げてしまう。こうした全国の人の考えとの乖離が改めて明らかになりました」
撮影■あいざわけいこ
※週刊ポスト2016年9月30日号