ライフ

年々増加する女性の「死後離婚」 どんなメリットがあるのか

死後離婚を申し出る女性が増加中

 夫が亡くなったあと「同じ墓に入りたくない」と“死後離婚”を申し出る女性が増えている。この聞き慣れない言葉は一体何を指すのか。葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏がいう。

「配偶者の死後に『姻族関係終了届』を提出することで、配偶者の血族(姻族)との関係を終わりにすることができます。死後に離婚することはできませんが、実質的に離婚と同じ効果を得られるので『死後離婚』と呼ばれている」

 死後離婚は年々増加している。法務省戸籍統計平成26年度年報によると、「姻族関係終了届」の提出数は2009年の1823件が2014年には2202件となった。

 死後離婚は男女どちらからでも可能だが、前出・吉川氏は「提出者の正確な男女比はわかりませんが、私に相談に来るのは、嫁姑問題に悩まされているなかで夫に先立たれた女性がほとんどです」という。

 5年前に60歳で亡くなった夫と死後離婚したA子さん(58)が語る。

「夫が腎臓がん闘病の末に亡くなると、同居していた姑とのふたり暮らしを余儀なくされました。夫側の親類からも『おばあちゃんを頼みますよ』と半ば押しつけられて、結婚直後から抱えていた夫の家族への不満が爆発してしまったんです。

『夫がいないのに姑の面倒なんてみたくない。同じ墓に入るなんて考えられない』と思い、結婚後30年住んだ街を離れて実家に戻りました。『姻族関係終了届』の書類は、姑のいる街に戻って提出するのが嫌だったので、行政書士に代理で提出してもらいました」

 もし、天国へ旅立った夫がこの事態を知れば複雑な心境になることは間違いない。死後離婚は妻にどんなメリットがあるのだろうか。行政書士の柿崎崇氏が解説する。

「『姻族関係終了届』を提出することで、姻族との関係を、民法上、他人に戻すことができます。相手方の同意は必要ありません。これにより、姻族の扶養義務がなくなる。提出したその日から効力が発生し、姻族の墓に入る必要性や墓の管理義務なども負わなくなります。

 ただし、届を出しても姻族との関係がなくなるだけで、夫との関係は変わらない。つまり、遺産はもちろん、遺族年金も死後離婚前と変わらず受け取れるのです」

 自分の死後、妻は必ず墓や老いた両親を守ってくれるはずだ──そんな期待は、すでに過去のものとなりつつあるのかもしれない。

※週刊ポスト2016年9月30日号

関連記事

トピックス

10月17日、東京・世田谷区の自宅で亡くなった西田敏行さん(時事通信フォト)
《俳優・西田敏行さん逝去》訃報を受けて一番に供花を届けた「共演女優」 近隣住民が見ていた生前の様子
NEWSポストセブン
現地時間の16日、ホテルから転落し亡くなったとみられている「ワンダイレクション」元メンバーのリアム・ペイン(31)。通報を受けて警察が駆けつけた際には、すでに蘇生の余地もない状態だったという(本人SNSより)
《目撃証言》「ワン・ダイレクション」ペインさんが急逝…「元婚約者」とトラブル抱え、目撃された”奇行”と部屋に残されていた”白い粉”
NEWSポストセブン
ワールドシリーズMVPも視野に
《世界一に突き進む大谷翔平》ワールドシリーズMVPに向けて揃う好条件「対戦相手に天敵タイプの投手がいない」、最大のライバルは“ドジャースの選手”か
週刊ポスト
「応援していただいている方が増えていることは感じています」
【支持者が拡大中!?】斎藤元彦・前兵庫県知事インタビュー「街頭で、若者からの支持を実感しています」
NEWSポストセブン
コンビ名はどうするのか(時事通信フォト)
「変えなくていいのか?」ジャングルポケット・斉藤慎二 残された2人を悩ます「コンビ名問題」
週刊ポスト
芸歴66年を迎えた石坂浩二
【石坂浩二ロングインタビュー】27才での大河ドラマ主演を振り返る「特別な苦労は感じなかった。楽しい思い出ばかりでした」
女性セブン
合法的な“落選運動”のやり方(イメージ。時事通信フォト)
【“裏金議員”の落とし方】公選法の対象外となる合法的な“落選運動”の注意点 「組織でやるのはNG」「根拠となる事実を提示」
週刊ポスト
10月17日、東京・世田谷区の自宅で亡くなった西田敏行さん
《逝去》西田敏行さん、杖と車椅子なしでは外出できなかった晩年 劇場版『ドクターX』現場が見せていた“最大限の配慮”
NEWSポストセブン
グラビアアイドルとしてデビューした瀬戸環奈さん(撮影/カノウリョウマ)
【SNSで話題の爆美女】1000年に一人の逸材・瀬戸環奈が明かす「グラビア挑戦を後押しした“友人の言葉”」
NEWSポストセブン
パリ五輪柔道女子金メダリストの角田夏実選手(時事通信フォト)
《ジャージめくって見せたバキバキ生腹筋》パリ五輪で柔道金・角田夏実、今後の去就「タレント活動の行方」「結婚願望」「3つの理想タイプ」
NEWSポストセブン
バレーボール女子日本代表監督の眞鍋政義氏が“火の鳥不倫”か(時事通信)
元女子バレー代表監督・眞鍋政義氏が騒動で初コメント「軽率な行動でご迷惑を…」 近く発表の新監督人事は
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「石破茂は保守かエセか」大論争ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「石破茂は保守かエセか」大論争ほか
NEWSポストセブン