「がん」「脳卒中」「心疾患」などによる死の中には、苦しみや痛みを伴うものもあれば、比較的「ポックリ」と死ねるものも存在する。一方で、様々な「死に方」の中で、どれが一番辛いかを見極めるのは難しい。
今回、本誌は内科や外科、看取り専門医など各科の医師を取材。名医たちが挙げた避けたい死に方は主に「痛みが激しいもの」、「長く苦しむもの」、「精神的負担が大きいもの」の3つのグループに分けられた。
「痛みが激しいもの」として急性上腸間膜動脈閉塞症などの病名も出たが、これまで3000人以上の死に接してきた日の出ヶ丘病院のホスピス医・小野寺時夫医師はすい臓がんを挙げる。
「すい臓がん、直腸がんや子宮がんの末期で神経浸潤が強い場合、激痛を伴いモルヒネなどを使っても痛みを十分緩和できない場合がある。中でもすい臓がんの痛みが最も激しく、患者さんが半眠状態になるほど大量の鎮痛剤を投与せねばならず、患者さんにとって不運で気の毒というほかない」
「大動脈解離も激しい痛みを伴います」と話すのは池谷医院院長の池谷敏郎医師(循環器)だ。
「三層構造の血管の壁がチーズのように裂けていく。大動脈が心臓の方まで裂けると背中にかなりの圧迫感や激痛が走る。あまりの痛さに気を失うので『死ぬ瞬間』まで苦しむことはありませんが、私は絶対に避けたいですね」
※週刊ポスト2016年9月30日号