何事もバランスが重要だ。だが、成長途上の大国には難しい課題のようだ。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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質はどうであれ、毎日おなか一杯食べられている──そんな感覚を現在、ほとんどの中国人が共有できるようになっているのではないだろうか。
ところが、そんな中国でいま“隠れ飢餓”という聞きなれない言葉が静かに広がっているという。“隠れ飢餓”とは、満腹であっても栄養が足りていない状態をさしてつかわれる言葉で、真っ先に思い浮かべるのが偏った食事だ。
9月3日付で『中国新聞ネット』にアップされた記事、「中国の“隠れ飢餓”人口は、3億人にも達する」は、そのことを強く警告したものだった。
記事の中で警鐘を鳴らしているのは、中国工程院の博士で中国農業科学院副院長の万建民氏である。万氏によると、2015年、中国の食糧生産は6億トンに達しており、すでに全国民が十分に腹を満たすことのできるレベルにある。しかし、食の「質」の問題はまだ多くの問題を抱えていて、長期にわたり栄養が少しずつ不足し続けることによって引き起こされるさまざまな体の不調が問題になりつつあるというのだ。
人間には炭水化物、脂肪、たんぱく質などの主要な栄養のほかに16種の鉱物、13種のビタミンを必要としている。これらが不足していると小児や妊婦の死亡率を引き上げるという。
万氏は、自ら訪れた農村部を例に、「その栄養の問題は10年前からほとんど改善されていない」と指摘する。極貧人口7000万人と合わせて中国には頭の痛い問題だ。