名古屋市が6月にネットを介して実施した「都市ブランド・イメージ調査」の結果は悲惨だった。「訪問したい都市」でダントツの最下位。「最も魅力に欠ける都市」でも2位の大阪市を引き離したトップだった。そうした経緯もあってか、ついに9月10日、名古屋に関するイベントを行なうNPO法人「大ナゴヤ大学」が『魅力のない街? 名古屋について考える』というシンポジウムを開催した。その参加者80人。
名古屋のシンボル・テレビ塔3階の会議室で行なわれたシンポジウムには、「名古屋を面白いと思って活動している」という6人の講師が登壇した。講師陣は名古屋の課題について、「面白い街なのに発信力が足りない」、「生活者としては住みやすいが、外の人には魅力がない」などと、持論を展開。講師のひとりが「車社会で道路が広く分断されており、街歩きする人が少ないので街が成熟しない」と主張すると、爆笑しながらも大きく頷く参加者が多かった。
そんな会場の空気が一変したのが、名古屋在住のライター・大竹敏之氏が登壇した時だった。プロジェクターに「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」と浮かび上がり、彼はこう語り始めた。
「旅先で一番大事なのは食事。名古屋メシはとにかく種類が多く、観光客にとって大きな魅力です。なのに、名古屋の人はその魅力に気付いていない。市長からして『駅のホームのきしめん屋が一番美味い』などといっては、名古屋の宣伝につながらない。地元民が魅力に気付いていないのは根深い問題です」
名古屋市のアンケート結果にも通じる鋭い指摘に参加者たちは身を乗り出して聞き入っていた。司会を務めた大ナゴヤ大学・学長の加藤幹泰氏がいう。
「魅力を感じる街づくりのためにイベントを企画しました。(週刊)ポストさんに注目して貰えるのはすごく嬉しいこと。芸人だってイジられるから売れるんです。名古屋人が、イジられて反発するばかりのプライドの高い奴みたいに思われるのはもったいない。結局は咀嚼する人間の度量の問題です」
『週刊ポスト』が提唱した「名古屋ぎらい」の波紋は、なおも広がる。朝日新聞の名古屋版(9月4日付)は読者投稿の「声」欄で前述のネット調査の結果を振り返り、
〈どうすればこの汚名を返上できるのでしょう。ぜひご意見や魅力アップ策をお寄せ下さい。ご自分の「名古屋愛」に関するエピソードでも結構です〉
と読者に「魅力アップ策」を問う、異例の呼びかけを掲載した。
※週刊ポスト2016年9月30日号