歯科治療には欠かせない、クラウン(被せもの)や入れ歯などを製作するのが「歯科技工士」だ。重要な役割を担っているにもかかわらず、低収入、長時間労働を強いられ、その結果、銀歯の精度が低下して虫歯の温床となる等、患者にも多大な影響が及んでいる。
今回、東京、名古屋、大阪、神戸、福岡の歯科技工士から話を聞いたところ、共通して歯科医の理不尽な要求や、パワハラまがいの言動も挙った。
技工指示書に疑問点があったので、歯科医に質問したところ、「機嫌悪くなって、『そんなの知るか! 出て行け!』って言われたことがあります。トラブルがあったわけでもないのに、その仕事は全部お返ししました」(神戸の歯科技工士)という。
最も多かったのが、『再製』と呼ばれる作り直しを無料で要求されるケースだ。
「技工士を歯科医の奴隷と勘違いしている歯科医がいます。“クラウンの装着に失敗したから、やり直して下さい。再製です”とある歯科医が要求してきました。2回作ったら私らの利益はゼロです。そう言っても“他のラボは黙って作り直してくれる”って。腹に据えかねて“お前らの犬ちゃうぞ!”とケンカして関係は切れました」
銀歯の場合、技工の精度が低かったり、長期間の経過で脱落するケースがある。そうした銀歯が、患者には知らされないまま“再利用”されているとの驚くべき証言もあった。
「歯科医が撤去した銀歯を集めて、技工所で溶かして再利用させるケースは沢山ありますよ。これは溶かした時に、とても臭い匂いが発生するんです。高温だから、雑菌はなくなるだろうけれど、私はやりたくはない。先生としては、保険で同じ額が請求できるから、金属代が丸々浮いて儲かる。本当はダメなはずですけど、業界の暗黙の了解です」(50代歯科技工士)