在宅死を望む高齢者は5割もいるものの(内閣府調査)、家族は看取りの経験も知識も乏しく、不安を抱えている。そうしたこともあってか、病院で死ぬ患者の数は欧米諸国では約50~60%だが、日本は約80%近い。そんな家族のために、看取りの手順などをまとめた小冊子を用意する医療機関や介護施設が増えている。
そこには分かりやすい言葉で、死の1週間前から現われる兆候や、臨終間際に見られる動作、そして他界直後に家族が取る行動などが記されている。そこで実際の資料と在宅専門医や看取り実績が豊富な老人ホームの協力をもとに作成した「お別れパンフレット」から「亡くなる1週間前に何が起こるか、どう対処すべきか」を紹介しよう。
──食事が摂れなくなっても、無理せず食べたいものだけ食べさせてください
死の1週間前頃から食欲や咀嚼・嚥下機能は著しく低下し、食べ物をほとんど受け付けなくなる。これは人間の自然な衰えだという。在宅医療に力を入れるたんぽぽクリニック院長の永井康徳氏が説明する。
「食事や水分を口からほとんど摂取できなくなったら、“(亡くなるまで)およそ1週間です”と伝えています。この頃になると、水分は1日500ml以上は摂れなくなります。食事も無理に食べさせなくてもいい。食べたいものがあれば、それを食べさせればいいんです」
無理強いすると消化不良や嘔吐を招き、不要な苦痛を与えかねない。この段階では家族から点滴の要望が増えるというが、これも身体がむくむなど本人にとって苦痛になることがあるので、注意する必要がある。
──眠っている時間が長くなりますが、無理に起こす必要はありません
食欲低下とともに、一日中ウトウトと眠っている「傾眠状態」と呼ばれる時間が増える。この間は“天然の麻酔”が効いているのと同じで、本人にとっても心地良い状態。
「心配して揺り起こしたりせず、眠らせてあげるのがいいでしょう」(同前)