在宅死を望む高齢者は5割もいるものの、家族は看取りの経験も知識も乏しく、不安を抱えている。そんな家族のために、看取りの手順などをまとめた小冊子を用意する医療機関や介護施設が増えている。
そこには分かりやすい言葉で、死の1週間前から現われる兆候や、臨終間際に見られる動作、そして他界直後に家族が取る行動などが記されている。そこで実際の資料と在宅専門医や看取り実績が豊富な老人ホームの協力をもとに作成した「お別れパンフレット」から「亡くなる当日の対処法」を紹介しよう。
いよいよ迎えるその日。死ぬまでに24時間を切ると、見た目にも明らかな変化が現われる。
──手足の皮膚から紫に変色していきます。脈も弱くなり、お別れの時が近づいています
呼び掛けに応じなくなり、頷くだけで言葉を発しない。血圧が下がり、手足が冷たくなってくる。脈も徐々に弱まり、尿も出なくなるなどの変化が見られれば、臨終が近づいている証拠。覚悟を決めなくてはいけない。
わかりやすい症状としては、皮膚が暗紫色に変色するチアノーゼが挙げられる。在宅医療専門のホームオン・クリニックつくば院長の平野国美氏が解説する。
「血液を全身に行き渡らせる心臓のポンプ機能と酸素を取り込む肺機能が弱まり、血液循環が滞ることで血中の酸素不足が生じて皮膚が紫色に変色します。数日間存命することもありますが、半日以内に亡くなるケースも多い」
──喉がゴロゴロと鳴り出します。苦しそうであれば薬や器具で除去しましょう
音でも死の兆候は感じられる。喉の奥がゴロゴロと鳴ることがある。これは咳払いもできないほど嚥下機能が弱まり、喉や気道内に唾液や痰が溜まることで喉が鳴る死前喘鳴(ぜんめい)という症状だ。この音が聞こえると、24時間以内に死亡するケースが大半だという。一般社団法人「日本看取り士会」代表理事の柴田久美子氏が対処法を話す。
「喘鳴のため苦しそうな様子を見せていたら、寝ているご家族の顔を横に向け、上半身を少し起こしてあげるといいでしょう」
それでもラクにならなければ、唾液などの分泌物を減らす薬を投与したり、専用の細い管を用いて分泌物を吸引する方法もあるという。死期が目前に迫った時、最も顕著なのが呼吸の変化だ。