党機関紙であり、すべての記事が共産党の意向を反映している「しんぶん赤旗」にも、“社説”欄がある。同欄のタイトルは、ずばり『主張』。その言説を、評論家の古谷経衡氏が分析する。
* * *
戦後71年を迎えた今年8月15日の「主張」。安倍政権による「改憲策動」「改憲の策動」という言葉が3回も登場する。
時間を遡って2015年8月15日。「日本を『海外で戦争する国』につくりかえる策動」、2014年8月15日「安倍政権がすすめる『戦争する国』の策動」、2013年8月15日「『戦争する国』になる策動」。8月15日には「策動」という言葉を使うのがここ数年の赤旗編集部での暗黙ルールのようである。
共産党は終戦記念日を「敗戦の日」と呼ぶ。天皇制国家が進めた侵略戦争が敗北に終わったことを強調するためである。しかし私も、終戦ではなく敗戦という単語を使うことが、歴史を真摯に直視することだと思う。
「敗戦」呼称には同意するが、その問題は白井聡氏の『永続敗戦論』の中で語りつくされている。
主砲、という単語を戦争用語と断じて封じる赤旗よりも、やはり白井氏の方が自由で小気味よい。「です・ます」などという軟弱な文体をやめ、いっその事「敗戦の日、水面下で進むアベ反動勢力の蠢動。平和を陵虐する破滅の裏声が聞こゆ」などと硬派な筆致のほうが日本語として美しい。
「です・ます」の中に「策動」などという前時代的な物言いを挟むからアンバランスになる。単語と文体は統一したほうがより味が出ると思うのは私だけか。
●ふるやつねひら/1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。主な著書に『愛国ってなんだ 民族・郷土・戦争』『左翼も右翼もウソばかり』。近著に『ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったのか』。
※SAPIO2016年10月号