プロ野球選手ならば現役時代の思い出の品は大事にとっておくものかと思いきや、野球解説者の江本孟紀氏(69)の場合は、まったく手もとに残っていない。唯一の残ったのは、辞めたばかりの時にドラム缶に手を突っ込んで型を取った右腕の石膏像。その「お宝」について、江本氏が語った。
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僕は現役最後の試合で「ベンチがアホやから野球がでけへん」とグローブを投げつけて引退しました。ロッカーにも寄らず荷物をそのままにして家に帰り、その後も取りに戻らなかったので、現役時代の野球用具は手元に一切ないんです。
唯一残っているのが、引退直後に雑誌の企画で作った僕の右手の石膏像。有名な芸術家が作ってくれたもので、浮き上がった血管まで再現されています。
ボールをいつハメたのかはわかりません。引退して35年になるけど、これを見ていると、現役時代に比べてだいぶ腕が細くなったなァと思います(笑い)。
参院議員時代には議員会館にも飾っていました。引っ越しする時は必ず自分の手で運ぶくらい、大切にしています。そのお陰か、30年以上経っても壊れない。東日本大震災でも棚から落ちなかった。
僕にも現役時代にこれくらい粘りがあれば、グローブを投げつけて辞めることはなかったかもしれませんね。
撮影■山崎力夫
※週刊ポスト2016年10月7日号