妻(夫)と生き別れて寂しいからとペットを飼い始める高齢者も多いが、ペット飼い主の高齢化がもたらすトラブルが相次いでいる──。動物保護愛好家の成田司氏がいう。
「加齢のために“人間側の嗅覚”が鈍ってしまう人が少なくない。ペットの排泄に気付かずに放置してしまい、近隣住民とモメてしまったケースがあります。また、80代で認知症になった男性は飼い犬に八つ当たりをするようになってしまった。棒で叩くなどの虐待行為を繰り返し、発見された時は傷だらけの状態でした。それでも健気に耐えて、保護されたときも飼い主を守るように寄り添っていたそうです」
飼い主が介護施設に入ることになった場合も、ペットを飼い続けることは難しくなる。
「日本の場合、有料老人ホームのほとんどがペット不可。入居の際にペットを殺処分される方が多いのが現実です」(保健所職員)
家族に影響を与えるケースもある。飼い主がペットより先に亡くなれば、遺族の“争続”トラブルにもなりかねない。昨年、母を亡くし、兄弟2人で遺産相続手続きをした40代男性が、ため息まじりにこう話す。
「不動産やお金などの相続の話し合いは円満に済ませることができました。ところが、実家の老犬の引き取りを巡って兄弟で大喧嘩になってしまったんです。
当然、実家を相続することになった兄が犬を引き取ってくれると思っていたら、兄が“飼えないから殺処分にする”と言い出した。私はペット禁止のマンション住まいなので飼いたくても飼えず、泣く泣く認めるしかありませんでしたが、両親がとても可愛がっていた犬だったので……」
“遺す立場”として、これでは子供にもペットにも心苦しい。