ライフ

火葬後の金歯・銀歯は市の予算に 名古屋市の収益4880万円

火葬後の金歯・銀歯はどう扱われる?

 葬儀の簡略化が進み、火葬場から遺骨を持ち帰らない遺族も増えているという。残された遺骨が、その後どう処理されるかご存じだろうか。実は遺骨の中に眠る“お宝”が「市の予算」になっていたのだ。

 火葬場で、職員に「これがのど仏ですよ」などと説明されながら、焼却間もない故人の遺骨を拾い集める。誰もが一度は経験したことのある場面だろう。

 この時、骨壷に入らなかった細かな遺骨などを「残骨灰」と呼ぶ。基本的に行政が処分するが、その中には思わぬ「お宝」が隠されている。故人の「金歯」「銀歯」などの有価金属である。

 その処理については様々で、業者が骨から有価金属を回収して売却する自治体や、残骨灰そのものを業者に売却する自治体もある。

 東京都では残骨灰を引き取った業者が有価金属を選別して都に返納。それを都が貴金属業者に売却する。東京都建設局公園緑地部公園課の担当者がいう。

「収骨後、残骨灰に含まれる貴金属を塊にして、業者に売却する。昨年度の都の収益は約644万円でした」

 国内最大級の火葬場を持つ名古屋市も東京同様、処理業者から返却された貴金属を売却する。その金額は桁違いだ。

「昨年度は金、銀、プラチナ、パラジウムを約4880万円で売却した」(名古屋市健康福祉局環境薬務課)

 昨年度の名古屋市の火葬件数は約2万4000件で東京都(約7500件)の3倍以上。火葬件数の多さが莫大な売却額をもたらしたと考えられる。

 過去には残骨灰の売却益を見込んだ処理業者が行政の業務委託を落札し、「遺灰ビジネス」と批判されたこともある。このため、残骨灰の適正な処理をめざす自治体もある。例えば北九州市は1991年に残骨灰の売却を中止した。

「残骨灰から有害物質を取り除いて市の収蔵施設に収めている。市民から『人体を換金するのは不遜』と声が上がり、有価金属の換金は一切していない」(北九州市保健福祉局保健衛生課)

 大阪市環境局事業管理課も「残った骨については、金歯などもご遺体の一部ということでそのまま遺骨と一緒に埋葬している」と話す。

 遺族からすればもっともな対応だが、こうした自治体は限られている。

 残骨灰の所有権に関して、1939年に「収骨前は遺族の所有、収骨後は市町村の所有」という大審院(現在の最高裁)の判決があり、多くの自治体は、「残骨灰の所有権は自治体にある」との立場だ。

 つまり、金歯などを引き取るには収骨の段階で確保する必要があるが、焼却直後の遺灰に包まれた状態では現実的に難しい。行政には思わぬ「ボーナス」だが、遺族感情としては複雑である。

※週刊ポスト2016年10月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
屋根工事の足場。普通に生活していると屋根の上は直接、見られない。リフォーム詐欺にとっても狙いめ(写真提供/イメージマート)
《摘発相次ぐリフォーム詐欺》「おたくの屋根、危険ですよ」 作業着姿の男がしつこく屋根のリフォームをすすめたが玄関で住人に会ったとたんに帰った理由
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン