コラム

海外機関投資家 「日本の新ディフェンシブ銘柄は最強だ」

日本の新ディフェンシブ株とは?

 海外マネーの日本株投資に顕著な変化が見られ始めている。海外金融機関の動向について詳しいパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズ代表取締役の宮島秀直氏が解説する。

 * * *
 今年に入って、欧州投資家に限らず外国人投資家は、日本市場ではディフェンシブ株を積極的に買い進めてきた。ディフェンシブ株とは、公益事業あるいは食品、医薬品、鉄道といった公共性の高い事業を手がけているなど、景気変動の影響をそれほど大きく受けないセクター・業種に属する株式を指す。

 これまで、こうした外国人投資家のディフェンシブ株へのシフトは、PER(株価収益率)が25 倍に達するといったん収まり、シクリカル株(景気敏感株)に回帰する傾向が見られた。だが、今年はPERが25倍を超えてもシクリカル株回帰が起こらなかったため、ディフェンシブ株のパフォーマンスが際立っていた(8月以降のシクリカル株の一時的な上昇は、短期売買で利益を追求するマルチアセット型投信による模様)。

 そこへブレグジット(英国のEU離脱)が起き、外国人投資家のディフェンシブ株物色に新たな段階に入った。これまでディフェンシブとされてきた銘柄よりも、さらにベータ値が低い「低ベータ」銘柄が選好されるようになったのだ。

 ベータ値とは、株式市場に対する個別銘柄の株価の反応度を指す。具体的には、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった株価指数が変動したときに、個別銘柄がどの程度変動するかを数値で表わしている。

 例えば、ベータ値の数値が「1」の銘柄は、TOPIXが1%上昇すると1%上昇し、1%下落すれば1%下落するというように、TOPIXと同じ値動きをすることを意味する。ベータ値が「2」の銘柄は、TOPIXが1%変動するとその2倍の2%変動し、ベータ値が「0.5」の銘柄であれば、1%の変動に対して0.5%変動する。

 また、ベータ値がマイナスとなる銘柄も存在するが、これはTOPIXが上昇すると下落するといったように、逆相関の関係になっている銘柄である。

 ベータ値は、個別銘柄のリスクを知るために参考にされる。「1」なら株価指数と同程度のリスクであり、「1」以下なら株価指数よりもリスクが低いことになる。外国人投資家は、従来のディフェンシブ株よりも、さらにリスクが低いディフェンシブ株を買っているわけだ。

 実際に、運用額で世界最大手クラスの投資信託運用会社は、日本の低ベータ銘柄の中から、ROA(総資本利益率)が高く、EPS(1株あたり利益)伸び率の高い銘柄をピックアップしたファンドを外国人投資家に提供している。さらに、別の大手投信も同様のファンド組成を進めているようだ。

 あるファンドマネージャーからは、「日本のシクリカル銘柄は世界最弱だが、低ベータ、高ROA、高EPS伸び率の新ディフェンシブ銘柄は最強だ」といった声も聞かれる。経済が縮小均衡するデフレ下にあって収益を出し続けている、日本のディフェンシブ株に対する評価は高い。

 ディフェンシブ株であるだけに、それほど大きな上昇は見込めないものの、「日本株は下値が他国市場に比べ顕著に堅くなり、投資環境の相対的優位性が高まった」と語る投資家は多く、その中には、世界最大のヘッジファンド・ブリッジウォーター社のレイモンド・ダリオ氏も含まれている。

 欧州からの資金流入に加え、日銀が7月の金融政策決定会合で、株価指数連動型のETF(上場投資信託)の買い入れを、年間3.3兆円から6兆円に増額した。この追加緩和を受けて、海外の投機勢は、日本株の売り仕掛けは当面見送るとする向きが多い。英国のEU離脱協議の本格化や各国の総選挙など2017年のEUの政治的混乱が顕在化するまでは、日本株は底堅い展開が続くだろう。

※マネーポスト2016年秋号

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン