神奈川県横浜市にある大口病院で発生した連続変死事件。点滴に界面活性剤を混入し、抗うことができない高齢者を次々に死に至らしめるという犯行は、病院に救いや安心を求める人々を恐怖に陥れた。捜査関係者がため息まじりに話す。
「最近、医療施設や老人ホームでは、職員や入居者間で様々なトラブルを抱えている。犯行の動機を含め、解明すべきことは山ほどある」
今回の連続変死事件の“最初の”犠牲者は9月20日に死亡した八巻信雄さん(88)だった。終末期患者の多い同病院では“よくある不幸”と思われたのも束の間、その2日前に死亡していた西川惣蔵さん(88)も中毒死だったことが判明する。さらに2人が入院していた4階フロアだけで7月から9月にかけて約50人もの患者が亡くなっていたこともわかった。
患者の家族からはこんな不安の声も上がっていた。
「夜でも誰でも出入りできるような状態だった。ホームレスらしき人が待合室でくつろいでいたこともある。“どこか具合が悪いの?”と声をかけたら、“ただの雨宿りだよ”って」
事件発覚直後から杜撰な管理体制が指摘されたため、外部の不審者など多くの人物が捜査対象になったという。だが、点滴に異物を混入させるには一定の専門知識が必要という見方が強まっていく。被害者の2人が入院していた4階病棟は寝たきりの患者が多く、自由に歩き回れる人は少ないことから有力視されたのが「内部犯行説」だった。
「殺人事件を扱う捜査一課が捜査に当たり、現場となった4階で働く看護師、話のできる状態の患者に重点的な聞き込みが行なわれた。すると今年に入ってから、看護師たちの間でトラブルが続出していたことがわかった。その中で、“あの子が事件について詳しく知っている”と名指しされた看護師もいた」(捜査関係者)