ユーロ圏ではIS(イスラム国)によるテロが頻発しているが、ユーロの動向にどう影響するのか? 30年の経験を持つ為替のスペシャリストで、バーニャマーケットフォーカスト代表の水上紀行氏が解説する。
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これまで、ドイツ最大の銀行であるドイツ銀行が米FRBによるストレステスト(健全性検査)で2年連続不合格だったとか、ギリシャが最近借入金の返済を滞っているなどといったネガティブな(否定的な)材料もありました。その上、緊張をエンドレスに余儀なくされる宗教的なテロが加わるので、ユーロ圏に住む人々は大きなストレスを抱えることになるものと思われます。
ユーロ/ドルは2014年5月にドラギECB総裁が、翌月ECBは追加緩和をすると予告したのをきっかけに、1.3900近辺から、2015年3月までで約3450ポイントも下落しましたが、その後現在まで横ばい状態が続きました。
一時期、上値も試されましたが、1.1600近辺が重く、結局また緩んできており、2015年2月以降の横ばいが、下げ相場での単なる踊り場に過ぎなかったものと思われ、現在は再度下落のタイミング待ちに入っているものと思われます。
そして相場が一方向に動くには、フロー(資金の流れ)が必要です。テロによる長期的なユーロ圏の低迷は、政府系ファンドやペンションファンド(年金運用機関)のような大口投資家筋にユーロからドルに逃避的な資金移動を促すものと見ています。
ユーロ/ドルの当面のサポートは、1.0800であり、そして、1.0500も強いサポートとなるものと思われますが、ISの問題が解決する可能性は、極めて低いものと思われ、1.0000(パリティー、等価)を割ってさらに下げる可能性はかなり高いもの思われます。
経済的合理性と相反するISとの闘いは、終わりの見えないだけに、ユーロ圏経済に、大きなダメージを与えることになるものと思われます。これまで、中東でたびたび行われていた自爆テロが、ユーロ圏での同様の頻度で起こることになったら、とてもではありませんが、ユーロ圏には近づけません。解決法がなかなか見つからないことだけに、厄介な問題だと思います。
※マネーポスト2016年秋号