「長年、ホームゲームの最終戦を見てきたが、今回みたいなことは初めてだ」──そう声を潜めるのはある中日ドラゴンズOBだ。
9月25日、ナゴヤドームでの対阪神戦の7回、3万8000人の観客で埋まった球場のライトスタンドに、〈落合追放!〉〈落合は去れ〉と書かれたプラカードが掲げられた。
「気が付いた球場スタッフが“降ろしてください”と呼びかけると、“大勢のファンの気持ちの代弁や!”とファンたちが怒鳴り返し、揉み合いになっていました」(前出の中日OB)
この試合、中日は1-4で敗れ、シーズン80敗目を喫して最下位が決定。試合後のセレモニーで佐々木崇夫・球団社長があいさつを始めると、一部のファンが8月に成績不振を理由に事実上解任された谷繁元信・監督のユニフォームを振り回しながらブーイングを始めた。
「谷繁が辞めたのは、お前の責任や!」
「落合の責任はもっと重い! GMをやめさせてくださーい!」
翌26日のスポーツ紙には〈落合氏、中日最下位でGM職はく奪〉の大見出しが躍った。4年連続Bクラス、19年ぶりの最下位という成績を受け、GMを務める落合博満氏が来年1月末の契約期限をもって職を解かれると報じられたのだ。
新設されたGMのポストに落合氏が就任したのは2013年10月のこと。8年間の監督生活で中日をリーグ優勝4回、2007年には日本一に導いた圧倒的な実績を、白井文吾オーナーに買われてのことだった。
しかし、その後の中日は谷繁兼任監督のもと2014年4位、2015年は5位と低迷。谷繁氏が専任監督となった今年は、シーズン半ばに監督と佐伯貴弘・守備コーチが休養に追い込まれ、ついに最下位に終わった。低迷の原因は、落合GMの補強失敗にあるとする声が少なくない。
「落合GMはいつも即戦力にこだわり、補強が社会人に偏重する傾向が強い。一昨年のドラフトでも、スカウト陣が有原航平(早大→日ハム)か山崎康晃(亜細亜大→横浜)をドラ1にとリストアップしていたのに、GMの鶴の一声で三菱日立パワーシステムズ横浜の投手、野村亮介になった」(球団関係者)
野村は昨年3試合に登板しただけで勝ち負けつかずの防御率10点台に終わり、2年目の今年は一軍登録もされなかった。有原が今季11勝、山崎が33セーブ(9月28日時点)をあげているのとは対照的だ。
補強を巡って、谷繁監督とも確執があったとの指摘がある。
「昨オフ、捕手の補強を最重要課題と考えた谷繁監督はFAで楽天の嶋(基宏)を獲得する構想を描いていた。地元の中京大中京出身の嶋は前向きとみられていたが、落合GMが方針を覆し、結局、獲得に失敗。そうした積み重ねが低迷と内紛につながった」(スポーツ紙デスク)
※週刊ポスト2016年10月14・21日号