百貨店の“閉店ラッシュ”が止まらない──。9月30日、じつに43年間にわたり地元の柏市民(千葉)に愛された「そごう柏店」が惜しまれつつ営業を終了したことは全国ニュースでも大きく取り上げられたが、近年、郊外型百貨店の撤退は珍しいことではない。
セブン&アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武だけを見ても、そごうが2012年に八王子店(東京)、2013年に呉店(広島)、そして先般の柏店と相次ぎ閉店。西武百貨店も2010年に東京都心部のシンボルだった有楽町店、2013年に沼津店(静岡)、今年に入り、春日部店(埼玉)、旭川店(北海道)と立て続けに閉店した。来年も筑波店(茨城)、八尾店(大阪)の閉鎖がすでに決まっている。
撤退続きの憂き目にあっているのは、そごう・西武だけではない。百貨店業界のリーディングカンパニー、三越伊勢丹ホールディングスに至っても、三越千葉店と三越多摩センター店(東京)の閉店を決め、伊勢丹では松戸店(千葉)、相模原店(神奈川)、府中店(東京)などの閉店を検討している模様だ。
「もはや百貨店ビジネスは、新宿や銀座、日本橋、渋谷など東京の旗艦店と呼ばれる大型店以外は採算を取るのが難しい時代。郊外でも人口100万人以上の都市でなければ顧客を掴めない」
こう指摘するのは、流通アナリストでプリモリサーチジャパン代表の鈴木孝之氏である。確かに、かつて10兆円近くあった百貨店の市場規模はコンビニにその座を奪われ、店舗数を増やした効果もなく6兆円程度にまで落ち込んでいる。
百貨店業界がここまで苦境に陥っているのはなぜか。鈴木氏が続ける。
「郊外店舗が不振に喘いでいるのは今に始まったわけではなく、バブル崩壊以降ずっと言われてきたことです。
郊外には人気ブランドのセカンドショップや、アウトレット店、ディスカウント性の強い専門店などを集めた大型ショッピングセンター・モールが次々とできたため、百貨店の主要ターゲットである高所得者層が分散したのです」
ここ数年は円高やアベノミクス効果、中国人観光客を筆頭に“爆買い”が起きるなど「神風」も吹いていたが、盛況ぶりは大都市圏だけの現象。「地方の百貨店は『負の遺産』として取り残されたままだった」(鈴木氏)というわけだ。