投資信託市場ではリート(不動産投資信託)を投資対象とするファンドの人気が高まっている。純資産残高によるランキングをみると、ベストテンには海外リートに投資するファンドが6本も入っている。そうしたファンドは、分配金が毎月支払われる毎月分配型がほとんどで、個人投資家の分配金へのニーズが強いことが、販売好調での要因となっている。
しかし、中には、高水準の分配金を維持するために、運用によって得られた収益から支払われる「普通分配金」に加えて、投資元本を原資とする「特別分配金」を支払っているファンドも散見される。分配金を維持するために支払うのであれば問題となってくる。楽天証券経済研究所ファンドアナリストの篠田尚子氏は、「もしリートファンドに偏重したポートフォリオを組んでいるなら見直しも検討すべき」と指摘する。その際の注意点を篠田氏が解説する。
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ポートフォリオを見直す際に、留意すべき点は2点。為替リスクと投資対象だ。実は、「ワールド・リート・オープン」といったような名称が付いている場合でも、投資対象は米国のリートが大部分を占めているケースが多い。
海外の他のリートのマーケットは市場規模も小さい。したがって、海外リートに資金が集中している人は、米ドルの為替リスクを取りすぎている人が多いのだ。円や他の外貨建て資産への配分を考えたい。
当然、リートから株式や債券といった他の金融資産への移行も欠かせない。これには、国内のリートを投資対象とするファンドも含まれる。株式や債券同様、リートも海外市場の動きに国内市場が影響を受けるからだ。
乗り換え先としてはリートファンドも含まれるが、『MHAM J-REITアクティブオープン毎月決算コース』と『パインブリッジ米国REITインカムファンドBコース(為替ヘッジなし)』などを検討するのも一考だ。前者が35円、後者が30円と、いずれも分配金の水準がリーズナブルであることに加え、運用内容から鑑みて、今後も安定的に分配金が支払われると予想される。
海外リートファンドを保有している人で、その高い分配金について不安を感じている人は少なくない。だが、どうしても一定の分配金が欲しいという個人投資家はいる。そうした人に対する、現実的な選択として挙げておいた。
リーズナブルとはいっても、例えば、『MHAM J-REIT』であれば、年間の分配金の合計額は420円。7月末の基準価額は9882円なので、利回りベースで4.25%となる。世界的な超低金利状況からすると、十分な水準だろう。
海外リートファンドを購入する人の中には、資産運用を始めたばかりというケースも多い。その中には、売れているという理由だけで、購入している人も少なくない模様。やはり分配金の高さが購入の動機となっているようだ。
いまは、自分にとって分配金は本当に必要なのか、必要だとすればどれくらいの金額なのか、といったことを真剣に考えるべきときだろう。すでに保有しているファンドや金融資産を考慮して、ポートフォリオの見直しをしてみてはどうだろうか。
※マネーポスト2016年秋号