今シーズン、19年ぶりに最下位に沈んだ中日ドラゴンズ。そのGMを務める落合博満氏は、ファンやマスコミからその責任を問われている。振り返れば、歴代6位の通算510本塁打、三冠王3回という選手としての輝かしい記録はもとより、監督として通算629勝(歴代21位、勝率・562)を挙げたその実績は申し分ない。選手・監督時代を通じて、批判に動じず結果を残すのが「オレ流」だった。
現役時代は、独特な神主打法を誰に批判されても改めることなく、圧倒的な結果を残した。監督時代になってからもとにかく勝ちにこだわった。
記憶に残るのは2007年の日本シリーズ第5戦だろう。日ハム相手に3勝1敗で迎えたこの試合、先発の山井大介は8回をパーフェクトに抑え、1点リードのまま日本一まで「あと3人」に迫った。しかし9回のマウンドに、当時の落合監督はストッパー・岩瀬仁紀を送ったのだ。
「ファンは当然、山井の完全試合を見たかった。それでも落合監督は“個人記録のためにやっているんじゃない”と、勝つための策を徹底した」(担当記者)
バントを多用し、万全の継投で守り切って勝つ。そんな落合野球は、面白みのない地味な野球と批判され続けた。
2009年のシーズン開幕前に開催されたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、中日の代表候補が揃って出場を辞退。当時の落合監督は「故障をした時の保障もない。(選手が)みんな出てくれると思っているのが大間違い」と発言した。チームの優勝には最善の策かもしれないが、ファンが喜ぶやり方とはいえない。
いつしか、落合采配には、「強いけど面白くない」という評価が定着した。その背景は、落合氏の独特なマスコミ対応もあった。
徹底した秘密主義で情報を出さず、采配の意図や狙いも説明しようとしない。うかつな質問をすれば「そんなことも分からないのか」とはねつける。
「同じ勝利に徹するスタイルでも野村(克也)監督は、采配の意図や選手の評価について、記者にわかりやすく解説した。記事を通じて選手に様々な意図を伝えようとしていたし、結果としてファンにもID野球として親しまれた。
一方、落合監督のような対応では、『オレ流』としか書きようがない。記者の目を節穴と評して、そのプレッシャーで記事の内容をコントロールしようとする手法でしたから、頭にきている記者はたくさんいましたよ」(中日新聞関係者)
※週刊ポスト2016年10月14・21日号