韓国社会には「在日1世は強制徴用で日本に連行された可哀相な人々」との共通認識がある。歴史認識の是非はともあれ、海外に暮らす同胞に特別な心情を抱くのは、同じ民族として当然のことだろう。一方で、韓国が在日に対する差別意識を抱き続けていることもまた事実である。特に、日本生まれの在日2世以降に対する風当たりは強い。
裏金疑惑で目下、世論とマスコミの袋叩きに遭っているロッテグループの一連の騒動でも、韓国社会における在日差別が露呈した。
如実だったのは、創業家の“お家騒動”を巡り韓国で会見を開いた重光宏之・昭夫兄弟へのバッシングだ。韓国世論は、在日2世の両氏が日本語と日本訛りの韓国語でインタビューに応じたことを槍玉に挙げ、「まともに韓国語が話せないのか」と噛みついた。昭夫氏の韓国語にわざわざ日本訛りの字幕を付け、笑い者にしたニュース番組もあった。
50代の韓国人男性が語る。
「私の会社でも、日本で生まれ育った女性が働いていますが、正直なところ彼女の“日本訛り”の韓国語に不快感を抱いている同僚は多い。韓国人は『言葉が違う人間は仲間ではない』という意識が強い上、日本に特別な敵対心があるので、ことさら差別意識が強くなるのでしょう」
韓国における在日差別意識は、1970年代から1980年代にかけて顕著になったと言われている。日本で成功した在日1世の子弟が続々と韓国に渡り、祖国での生き方を模索し始めた時代だ。在韓ジャーナリストの藤原修平氏は、「在日への差別意識が高まった背景には韓国社会に充満する嫉妬心がある」と分析する。
「当時は日韓の経済格差がまだまだ大きく、韓国人は裕福で身なりが洗練された在日に接するたびにショックを受けていたそうです。それはやがて嫉妬心に変わっていきました。さらに、日本から来た在日が起業やビジネスで成功すると、『自分たちの生活を脅かす目障りな存在』と疎むようになったのです」