自分の「最期」について考えるとき、最も身近な“お手本”となるのは、両親が亡くなった時のことではないだろうか。厳しかった父、優しかった母はどうやって人生を締めくくったのか──。経済アナリストの森永卓郎氏(59)が、「父の死」に際して見たこと、学んだことを明かす。
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2006年11月に父は突然脳溢血で倒れ、左半身麻痺が残って要介護状態になってしまいました。すぐに弟と相談して、私の自宅で在宅介護をすることを決めました。私は長男だし、“父をいきなり施設に入れていいのか”という、漠然とした「家族の情」があったんです。
とはいえ、私は仕事がびっしりで介護は妻に任せきり。自宅にできるかぎり手すりをつけ、ナースコールのような装置をあちこちにぶら下げ、介護保険もフルで活用したけど、それでも妻の負担は相当でした。
妻は朝6時に起きて朝食を作り、父を起こして着替えさせ、日中は家事に追われる。深夜には「ナースコール」で起こされることもしばしば。
何より大変だったのは、他人の言葉を素直に聞かない父の性格です。「危ないからやめて」と反対しても、「運転免許を更新する」と言い出し、勝手に高齢者講習の予約を取ってしまったこともありました。
ある時、追いつめられた妻から、「もうあなたと離婚するしかない」というメールが送られてきました。私は「もう限界だ」と覚悟して、介護開始から1年半で父の施設入所を真剣に考え始めました。父も納得してくれましたが、意外なことに妻のほうが「ここまでしたのに施設には入れられない」と頑なに反対しましたね。