加入対象がほぼすべての現役世代に拡大する改正法が成立したことで、個人型確定拠出年金(個人型DC)に注目が集まっている。
加入する際に注目したいのは、口座の手数料だ。個人型DCには複数の手数料がかかり、そのうち加入時の手数料と毎月自動的に差し引かれる口座管理手数料は金融機関によって異なる。加入手数料は一度きりだが、口座管理手数料は毎月差し引かれるのでなるべく安いところを選びたい。
主要な金融機関を比較したところ、口座管理手数料ではスルガ銀行と楽天証券が安い。特にスルガ銀行は残高条件はなく、最初から最安の2004円が適用される。楽天証券も2017年12月末まではキャンペーンを実施しており、事実上最初から最安で利用できる。
SBI証券は残高が50万円以上になったら最安水準となる。このハードルは拠出額が大きい自営業者が上限を積み立てれば8か月で超えられるが、上限が低い公務員では3年半ほどかかる。
積み立てる金額は上限の範囲内なら1000円単位で自由に設定できるが、口座管理手数料は拠出額に関係なく一定だ。このため、手数料のインパクトは拠出額が小さいほど大きくなる。たとえば、毎月500円の手数料は6万8000円を拠出する自営業者にとっては0.7%だが、1万2000円しか積み立てられない公務員にとっては4%に達し、負担は大きい。拠出額が小さい人ほど手数料にはシビアになる必要があるだろう。
金融機関は途中で変更することは可能だが、投資している資産はいったん売却して現金化する必要があるなど、手続きは面倒だ。加入の段階で一生付き合うつもりで選ぶ必要がある。
個人型DCは拠出額に限りがあるので、現時点で加入対象である人ならなるべく早く手続きをして拠出を始めた方が有利となる。年明けに新たに加入対象となる人の場合、当面は金融機関の比較をして絞り込んだり、投資対象や割合などを検討する時期だ。金融機関への資料請求は可能だが、実際に加入の手続きができるのは年末近くになる見込みだ。
■文/森田悦子(ファイナンシャルプランナー・ライター)
※マネーポスト2016年秋号