道路交通法はもちろん全国共通。だが、実際には車の運転には“お国柄”を反映したローカルルールが数多くあり、毎日のように危険を生んでいる。たとえば、十字路では左折や直進が優先されるが、山梨県では対向車の有無にかかわらず右折車が突っ込む「山梨ルール」があると言われている。山梨県庁・リニア交通局交通政策課に聞いた。
「もちろんごく一部の話ですよ。県民の感覚的なものでしょう。ただ山梨県の現状の交通マナーは理想的とは言えませんので、今後も県警と連携して、法令遵守の徹底を訴えていきたい」
そうした“独自ルール”をこれでもかと詰め込んだのが、愛知県名古屋市の道路で見られるという「名古屋走り」だ。
「ウインカーを出さずに進路変更、無理な割り込みなどマナーの悪さが目立ちますが、とくに『右折フェイント』なるものが有名だと聞いています。渋滞を避けるため右折車線を走行し、交差点直前で直進車線に戻るという“荒技”で、他県からの旅行者や転勤者は恐怖に感じる」(交通ジャーナリスト・今井亮一氏)
黄信号どころか赤信号でも変わったばかりなら突っ込んでもOK、という荒い運転については、「黄色まだまだ赤勝負」なる“名古屋標語”もあるという。
JAF調査で「全般的に交通マナーが悪いと思う」で1位になった香川県(80%)では、踏切に入る前に一旦停止をしなくてもいいという「香川ルール」も横行しているという。もちろん道交法違反だ。危険なローカルルールはなぜ定着してしまうのか。同志社大学教授の内山伊知郎氏(交通心理学)が解説する。
「地元ドライバーの間では慣習化し、”便利なルール”として根付いてしまっていることが問題。そのルールを誰かが破れば、逆に交通に乱れが生じるというプレッシャーすら感じるようになっている。改善には自治体や警察が中心になって、継続的に訴えるしかありません」
ローカルルールが、大事故の引き金にならないことを願いたい。
※週刊ポスト2016年10月14・21日号