女子大生がアルバイトして風俗に勤めるという「女子大生風俗嬢」が社会問題になりつつあるが、しかしその背景に何があるかはあまり知られていない。
性産業を取材するノンフィクションライター・中村淳彦氏は、貧困問題を追い続けるルポライター・鈴木大介氏との対談集『貧困とセックス』(イースト新書)の中で、この問題の元凶は「奨学金制度」だと指摘している。中村氏はこう解説する。
「親の援助が少ない自宅外通学や私立大学の女子大生は、風俗産業に身を投じざるを得ない環境と条件が揃っているといえます。その背景にあるのは、2004年に政府が高等教育費の削減のために、日本学生支援機構という独立行政法人をつくって大学奨学金を金融事業化したことです。原資を財政投融資に切り替えて、回収も厳格になっています。
これは、審査で親の世帯収入が低いと認められると、有利子の貸付を受けられるというありえない制度で、何も持っていない貧乏育ちの子たちが、社会に出る前に300万~800万円という巨額負債を背負わされることになったのです。
そもそも、高校3年生という未成年に数百万円の負債を決断させるのは非常識です。また、同じ財政投融資を原資にしている住宅ローンは住宅を担保にでき、たとえ返せなかった場合でも住宅を手放せば相殺できますが、奨学金は教育費なので、返せなくなったら連帯保証している収入の低い親に返済の義務が行きます。本当に逃げ場がないといえるでしょう」
こうした状況を受けて、就学しながら稼ぐためにはキャバクラなどで働くことになるケースも増えているというが、その先に待っているのは何か。鈴木氏はこう言う。
「実際に“非接触”を謳っている求人でも、面接してお店に入ったら、最初はサクラの客をつけて稼がせて、おいしい思いをさせて、『“接触系”ならこの3倍は稼げるよ』といった誘因で普通のデリヘルに移るように仕込まれていますから、あっという間に女子大生風俗嬢の完成です」
こうした状況に陥ってしまったことを、彼女たちは心の中でどう思っているのだろうか。中村氏は女子大生風俗嬢たちの心情について、以下のように語る。
「現役女子大生はカラダを“換金”しやすい。女子大生で風俗をやると腹をくくれば、それなりのお金になります。アルバイトで時間に追われる学生と比べるとそれなりに充実した学生生活を送れるし、就職活動にも集中できる。だから、多くの女子大生風俗嬢たちは、つらいどころか、『風俗って仕事を知れて本当によかった。一歩を踏み出していなかったら、自分がどうなっていたかわからない』と言うほどです」